御伽噺1(蔵馬メイン小説)

□遠い未来の物語
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『いつか貴方に話したよね?妖狐の命の炎の話。』
「思い出話なんて・・・よしてくれ。」
『一生に一度、その一生が終わる時、命を炎に変える事ができるって。』
「・・・・・。」
『俺は貴方の中にいるよ。』
「蔵・・・馬・・・?」

熱い・・・
妖気を発していないのに・・・今の自分には妖気等無いに等しいはずなのに・・・

『貴方なら感じてるはず。俺の命は貴方と共にある。』
「まさか・・・」
『いつでも貴方と共にあります。』
「・・・っ!」
『飛影・・・生きて。貴方が生きる事で、俺も命を与えられる。』
「馬鹿野郎っ・・・」
『貴方を愛してます。』
「蔵馬・・・ずっと一緒に・・・」
『飛影・・・』

それっきり聞こえなくなった声を自らの内に封じ込めるように、飛影は自らを抱きしめた。
その内にある熱の存在をただただ感じていたかった。





「躯!黄泉!修羅!」
「浦飯・・・久しぶりだな。今大会、まさか最終日まで話す機会がないとは思わなかった。」
「おっす黄泉!修羅もでかくなったなー!」
「いつまでも子供扱いするな。」
「はははっ・・・なぁ、飛影いつの間にエントリーしてたんだ?」
「実は俺も知らなかったんだ。あいつに聞いても小さく笑ってかわしやがる。」
「そっか。まぁ立ち直ったみたいでよかったぜ!」
「蔵馬・・・本当にもういないんだな、父さん。」
「修羅・・・誰しもいつかはその生涯を終えるのだ。」

自分とそう背丈が変わらなくなった修羅に黄泉は静かに言い聞かせた。
黄泉が自分に見えない所で涙を流していた事を修羅はわかっていた。
それ程、蔵馬の存在は自分達にとって大きかった。

「しかしあれだけ落ち込んでた飛影が決勝かよ・・・」
「元が戦闘馬鹿だからな。わからなくもないが・・・そう立ち直ったんだか。」
「優勝したりして・・・」
「あのふっきった顔を見ていると、それもありえなくないかもな。」
「始まるぞ。」

その大会の最後の試合がビジョンに映し出される。
4人はそこに立つ仲間を見守る。





戦いが始まって数十時間・・・決着は未だについていなかった。
しかし会場の誰もが緊張感を保ったままだった。

「・・・え?」
「飛影のあの表情・・・」
「あんな顔見た事ねぇぞ。」
「おい・・・今飛影の奴、何か言わなかったか?」
「・・・どういう意味だ?」
「何がだ?黄泉。」
「お前も読んだか。」
「おい、躯!なんの話だよ!?」
「飛影が呟いたんだよ。」
「修羅?」
「『○○、○○○。』って・・・」
「・・・あ?」





「そろそろ終わらせるか。」

飛影は右手に気を集中し始めた。
それまでとは比べ物にならない程の熱が集まる。
そして静かに目を閉じて、たった一人にしか見せた事のない表情を浮かべた。
愛する者にしか見せなかった、とても穏やかな表情・・・

「蔵馬、行くぞ。」

次の瞬間、二つの炎が一匹の妖怪を焼き尽くした。




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