御伽噺1(蔵馬メイン小説)

□flowers
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「ご苦労さん、客が来てるぞ。」
「客?」
「お前の部屋に通してある。心配するな。蔵馬の事も知ってる奴だ。」


躯の言葉を最後まで聞かず飛影はそこを通り過ぎた。
小さくなっていくその背中を見送りながら時雨が呟いた。


「あの花が何本目になりますかな。」
「さぁな。あいつが花持ってるなんて・・・似合わなすぎて笑っちまうぜ。」


鼻で笑って躯は自室の扉を開ける。
枕元に挿してある一輪の枯れた花を見てため息をついた。






「お、お疲れさん。」
「いつ来た?」
「んー・・・30分くらい前かな。よし、今日はこれでおしまい!」


蔵馬の横たわるベッドの横の椅子に座って雑誌を読む幽助がタバコを消した。
蔵馬を気遣ってか、幽助はこの部屋では2本までしか吸わない。
飛影は剣をたてかけると蔵馬の横に腰を下ろし髪を撫でた。


「蔵馬、今日は鏡魔湖のほとりまで行ってきたぞ。
近頃はあの辺りにまで人間が迷い込むからな。」
「飛影・・・」
「それと、昔お前と行った哀美の川の上流。
あの時お前が花を植えたろ?あれが蕾をつけていたぞ。
前に見に行った時はまだ俺ぐらいの背丈だったのに、今じゃ煙鬼ぐらいになってた。」


飛影は毎日パトロールから戻るとその日あった事を蔵馬に伝えていた。
それに対してうつろな目のままの蔵馬は何も言わない。






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