御伽噺1(蔵馬メイン小説)

□First Tears
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「あ、母さん出かけたのか。」


一枚の手紙を見て小さく呟いた。
冷蔵庫を開けて夕飯のメニューを考える。
今日は弟も父もいない。
こんな時は適当に済ませたりコンビニ弁当だったりするが誰かさんが来るかも・・・と思うとちょっと料理も張り切ってしまったりするわけで。
来なかったら自分で食べればいいわけだし。

そう思っただけでテンションが少し上がる。
こんな自分は絶対外では出さない!
誓いながら包丁を握る。


「あと3時間ってとこかな・・・」


テレビをつけるが頭にあるのは彼の事。
知ってる芸能人が何か言ってる。
でもそんな事どうでもいい。


早く・・・早く来ないかなぁ。








「おい!おい蔵馬!!」
「ん・・・」


ふと意識が戻るとそこにはすでにあの人。
寝てしまったのか・・・
出迎えてあげられなかった後悔が少しずつ大きくなる。


「珍しいものが拝めた。お前の寝顔なんてそうそう見れるもんじゃないからな。」
「・・・すいません///」
「起こさないほうがよかったか?」
「そんなっ・・・」


慌てて髪を整えるとそれを見て飛影が笑う。
笑われた事とその笑顔に顔が熱くなるのがわかり蔵馬は俯く。


「飯は?」
「えっ?・・・あぁ、ありますよ。食べます?」
「腹減った。」
「・・・俺もです。」


本当に小さな言葉でも嬉しい。
知らぬ間に蔵馬は笑顔になっていた。
一緒に夕食を食べて、たわいもない話をして、食後にテレビを見て、コーヒーを飲みながらまったりする。
ただそれだけなのに、他の何をしている時よりも蔵馬は楽しかった。
時間が過ぎるのは早く、もう深夜1時をまわろうとしていた。




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