御伽噺1(蔵馬メイン小説)
□黒の呪縛
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「考え事か?」
「・・・っ!?」
後ろからまわされた手に、耳元で囁く声に蔵馬は現実に引き戻された。
油断した・・・
またも気配に気づけなかった自分を心底憎んだ。
「どうしてもお前に会いたくなってな。
鍵が開いていたのでお邪魔させてもらった。
誰の事を考えていたのかな?」
動けない。
恐怖に近い感覚に気を抜いたら体が震えてしまいそうだった。
蔵馬の背を汗が冷たくつたう。
「バラの香りか・・・たまらないな。」
途端、蔵馬の視界がぐらりと揺れる。
見開いた深緑の瞳に映ったものは、イメージの最後に見た自分の死体を見下ろす表情。
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