御伽噺1(蔵馬メイン小説)

□綺麗と幸せと光と・・・
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「お前にもわかる時が来るさ。」
「なんか腹立つな、お前。」


ははっと笑って俺に酒をつぐ。
馬鹿にされた気分だ。
俺がガキだとでも言いたいのか?


「蔵馬。」
「なんだ?」


急に真剣な顔で見るから俺も一瞬真剣になった。


「お前は、光の当たる所を行け。」
「・・・・・あ?」
「この月が照らしてくれるように。光の当たる所を行け。」
「意味がわからんぞ。」
「暗い所は俺が行くから、お前は光の下を行けばいい。」
「黒鵺?」
「光の下にいれば、そのうちお前にもわかるさ。」


幸せというものがそんな限られた場所でないとわからないのなら、俺は知らなくていい。
そう思ったが、あまりにも奴が真剣な表情で言うからその言葉を酒と共に飲み込んだ。


「お前は綺麗だな。」
「なんなんだ、イキナリ・・・」
「俺が綺麗だと思うもの。月の下の蔵馬。もちろん普段の蔵馬も綺麗。」
「・・・・・ばぁか。」
「綺麗だよ。」


口を開いたら本心を言ってしまいそうで。
受け止めてくれるだろうけど、でも言えなくて。
黒鵺の遠まわしな告白と共に酒で何度も流し込んだ。




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