薔薇の記憶(過去作品)

□時空を越えて(過去連載)
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「何日もエサを食べれず、水だけを飲んで生き続けました。
ある日・・・川のほとりで倒れていた俺に狼が近づいてきた。」

その場景を思い出す。
サラサラと流れる水音に唸る声が雑じる。
土を踏みしめる足音が近づいてくる。

「狼にとって俺はただのエサだった。
犯してからじわじわ食い殺してやる・・・そう言われました。」
「・・・・・。」
「そして情事を終えて、いざ狼が俺の喉元に食いつこうとした時・・・体が熱くなった。
次の瞬間、狼はただの肉の塊になっていた。」
「・・・・・。」
「その時思ったんです。
俺は生きなければならない。生きなければならない理由が必ずあると。」

その時、肩を抱いていた飛影が両腕でしっかりと蔵馬を抱きしめた。
耳元に口付けて、あおれを繰り返す。
幼子をあやす様に。

「それから俺は必死に生きた。力も必要になれば使った。
そして周りの動物達や人間達が次々に死んでいく中で、いつからか先が見えない程の寿命を悟った。
力は強くなる一方、毛は白銀に変わっていった・・・そして、俺は妖怪になった。」
「・・・妖狐。」
「それまで見えなかった魔界の入り口の存在に気づき、生きる世界を魔界に移した。
あとは貴方の知る通りです。」
「・・・・・。」

自分と同じように孤独の中で生きてきたのか。
これ程までに眩しいのに。
これ程までに周りを惹き付けるのに。
そう思うと、自分の腕の中の存在がたまらない程愛おしくなった。

「飛影?」
「氷河の国から堕とされ、手足が使えなかったのになぜ生き延びたのかわからん。
だが、無意識のうちに俺は生にしがみついた。
未来でお前に会う為に・・・。」
「・・・飛影。」
「あれから数百年・・・やっと今こうしてお前を抱きしめられる。
これだけで過去等どうでもよくなる。」
「・・・・・。」

蔵馬は飛影にしがみついた。
飛影も顔をその柔らかい髪に摺り寄せる。

「貴方に会えてよかった・・・」

気が遠くなる程の時を越えて巡り会った存在。
それに出会う為だったと思うと、どんなに忌まわしい過去すら美しい記憶になる。
互いの存在を確かめ合って、俺達はこれからを生きていく。
永遠に続けと願う、それは時空の旅。



end


2006.2.6の日記より。
蔵馬の過去。
妖狐になる前のお話。
1000年以上生きた狐が妖狐になる。
黄泉が光を奪われて1000年。
ここですでに2000年経過。
・・・蔵馬の年ってwww
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