御伽噺1(蔵馬メイン小説)
□帰郷
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魔界には人間界のようにわかりやすい四季は存在しない。
場所によっては極寒の地や灼熱の地はあるが。
生ぬるい風と。
血の臭いと。
狂気。
魔界にはそれだけが存在する。
けれど。
あの場所には。
あの場所にだけは。
穢れきった心すら優しく抱きしめてくれるような存在がある。
魔界という世界に似つかわしくないその姿は。
それでも堂々とそこに立っている。
そして真っ黒に塗りつぶされた心を持つ魔界の住人達に【美しい】という感情を思い出させてくれる。
あの存在があそこまで美しいのは。
きっと。