御伽噺1(蔵馬メイン小説)

□貴方の為のこの料理
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「じゃあ始めますか。」
「はい!よろしくお願いします!」

土曜日、蔵馬の部屋はいつになく賑やかだった。
普段から飛影が来ていてもあまり騒がしくならないからいっそうそう感じられる。

「まず牛肉に塩と黒コショウで下味をつける。」
「はい!」
「仔牛を使うんですけど、無ければ牛や豚のロース肉でかまいませんから。」
「これは?」
「これは仔牛。いつも俺が行く店は仔牛置いてるんで。」
「そうなんですか。」

キッチンから聞こえる二人の声。
料理を教える講師とその生徒だとすぐにわかる。
ただ、講師が男で生徒が女という所が面白い。

「楽しみだな〜♪」
「なぜ貴様がいるんだ。」
「だってよー、いきなり雪菜ちゃんが『私に料理を教えてください!』なんて言うんだもんよ。」
「雪菜さん・・・俺の為にっ!!」
「馬鹿が。」
「そうさね!私らも食べなきゃねぇvv」
「でも蔵馬さんってすごいわねー。料理も出来ちゃうなんて!」

ヘラヘラ笑う幽助と感激の表情の桑原に舌打ちしながら飛影は自分の発言を後悔していた。
ぼたんと螢子は蔵馬が入れたハーブティーに舌鼓を打ている。
ついこの間、幻海の屋敷で幽助主催の宴会を開いている時に言った飛影の一言で全ては始まったのだ。

『蔵馬の飯は何よりうまい。』

確かに酔っていた。飛影は確かに酔っていた。
けれどどこか本心な部分もあった。
そこに食いついたのは何を隠そう・・・隠しまくりだが彼自身の妹、雪菜だった。

『飛影さんは蔵馬さんのお料理が大好きなんですか?』
『あいつの飯を食えば魔界で何も食えなくなる。』
『やはりお料理ぐらい出来たほうがいいですよね。』
『当たり前だ。お前もあいつを見習うんだな。』
『蔵馬さん!私にお料理を教えて下さい!!』

こそこそと話していたのに彼女が大声で言ったその一言で皆が食いついた。
その後からかいまくられた飛影はそれまでに無いぐらい自分を責めた。


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