御伽噺1(蔵馬メイン小説)

□想ヒ全テヲ貴方ニ捧グ。第四章
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「蔵馬、気分はどうだ?
最近迷い込む人間も少なくなってきた。パトロールも暇だ。」


部屋に戻り飛影は自分を待つ者に声をかけた。
マントを脱ぎ去りため息を一つつく。
水をぐいっと流し込み、彼の隣に体を投げた。
ベッドが少し揺れて飛影を受け止めた。


「パトロールなんぞ知るか。
ったくいつまでこんな事すればいいんだ。」


天井を見ていた体の方向を変えて彼に向ける。
彼は静かに天井を見ていた。
その頬に触れて飛影は小さく笑った。
誰にも見せた事のないような優しい表情で。


「お前とこうしてずっといる方がいいのにな・・・」


親指で撫でてみる。
だんだんそれだけでは足りなくなって、手のひら全体で頬を包んだ。


「このまま眠って・・・目が覚めなければいい・・・」


手のひらだけじゃ足りない。
そう思った飛影は彼を抱きしめて眠りについた。
腕の中に彼を包み込むとひどく安心する。
毎日毎日、飛影は彼を抱きしめて眠る。
起きたら彼が笑って自分を抱きしめ返してくれるかもしれない・・・
そんな期待を抱きながら。
あの日から・・・




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