御伽噺1(蔵馬メイン小説)

□想ヒ全テヲ貴方ニ捧グ。第二章
1ページ/7ページ

「どれくらいぶりかな・・・客が訪れるのは。」
「・・・・・。」
「なんと懐かしい顔だ。相変わらず美しい。」
「お前が知っている姿ではないが?」
「妖気でわかるのだ。それにその姿もじゅうぶん美しいぞ?」
「・・・良狂。」


遠かった。
百足の位置が悪すぎた。
四日もかかってしまった。
飛影の元へ戻るのにもまた四日。


「・・・ギリギリだな。」
「何用だ?」
「手術を依頼したい。今すぐにだ。」
「・・・ずいぶん切羽詰っておられるようだ。」
「一刻の猶予も無い。」


歩み寄った良狂が蔵馬の頬に触れようとした瞬間、蔵馬はその言葉でそれを止めた。
漆黒の瞳に映る自分の表情があきらかに焦りを浮かべていた。
無言で先を続けろと言われているように感じ、蔵馬が簡潔に飛影の症状を述べた。


「ふむ・・・やっかいだな。」
「しかしお前しか成功者はいないのだろう。」
「いかにも。しかし私にもとても難しい手術だ。」
「報酬は払う。」
「良い心がけだ。私への報酬はどういう物か知っているだろうに。」
「・・・・・。」
「あの日、角を持った妖怪の怪我を治す為にお前に求めた報酬は・・・」
「その妖怪の光を奪う事・・・だったな。」
「さよう。まさかその妖怪が一国の王になろうとは思いもせんかったが。
盲目の王、黄泉・・・今でもなぜ自分が光を奪われたか知らないのではないか?」
「・・・・・。」
「まぁそれを話す事も禁じていたがな。」



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ