御伽噺1(蔵馬メイン小説)
□トキメキ
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トキメキ
「…飛影、」
「何だ」
声と共に視線をそちらに向ければ、自分を呼んだ相手は少し迷うように視線を泳がせた後、ゆっくりと口を開いた。
「好き」
柔かな笑顔と一緒に降って来たそれは、あまりにも温かで愛しくて。
今までに何度も聞いたことのある言葉に違いは無いんだが、何故か何時もと違う感覚。
鼓動が跳ねた。
顔が、熱い。
「…飛影?…っ、わ!?」
そんな顔を見られたく無くて、覗き込んで来たソイツの腕を引いて抱きしめた。
これだと煩い鼓動が伝わってしまうんじゃないかと気付いたのは、後の話。
昔は何時もこうだったような気がする、だとか思い返しながら、それでもソレは収まらない。
「……飛影?」
名前を呼ぶ唇を軽く自分のそれで塞ぐことも、何だか落ち着かない。
何時もしていること、なのに。
どうかしてる。
不思議と嫌じゃない理由なんて、知るわけもない。
まるで 何時かのような、
fin
.