御伽噺1(蔵馬メイン小説)
□flowers
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こんな事、誰にも言わない。
だって俺らしくないから。
何も求めなかったんだ。
手に入るはずないと自分に言い聞かせて、自分で遠ざけてきた。
失うのが怖かったのかもしれない。
・・・いや、怖かったんだ。
隣にいるのが当たり前と思える誰かなんて今までいなかったから。
お前があの部屋で俺を迎えてくれるかどうか・・・
それを確かめたくて足を運んだ。
・・・でも、窓を開けるときのお前の笑顔を見る度、
いついなくなってしまうんだろうと怖かった。
俺はやっぱり大馬鹿だ。
怖がって、怯えて、逃げ続けた結果がこれだ。
憎まれ口ならいくらでも言えるのに、どうしてあれ程までに言葉を飲み込んだのだろう。
たった一言・・・
たった一言、お前に伝えたかったのに。
なぁ蔵馬。
この現実が何よりの恐怖だ。
蔵馬・・・怖いんだ。
お前が笑わない現実が・・・怖くてたまらない。
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