御伽噺1(蔵馬メイン小説)
□SS
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Green Heart(飛蔵)
「また新しいのが増えたのか。」
「え?・・・あぁ、それね。母さんが買って来てくれたんですよ。」
窓辺に二つ並んで置かれた小さな植木鉢に気づいた飛影が烏龍茶の入ったグラスを持ったまま近づいた。
皿に並んだクッキーを二枚取って立ち上がると蔵馬は一枚を飛影に渡して隣に並ぶ。
「俺がただの植物好きと思ってるからね。こうやって時々小さい観葉植物を買って来てくれるんですよ。」
「ふっ・・・武器にしてるとはとても言えないな。」
「まぁね。でも全部を武器にしてるわけじゃないですよ?
それにこれを武器にするのはちょっと可哀相だしね。」
「奇妙な形だな。」
飛影がちょんと指でつつく。
「ハートホヤ・・・だったかな?可愛いでしょ?」
「ハート・・・確かに。」
ガラス製の鉢からはハートの形をしたサボテンの様なぶ厚い葉が一枚出ているだけ。
根があるだろう部分を埋めている青いガラスビーズが夏らしい。
「タイではこれを枯らすことなく育てられたら幸せになれるって言われてるそうですよ。」
「くだらん。」
「あ、飛影にもあげますよ。二つあるし・・・」
「俺は別に・・・」
「まぁまぁ、俺と思って!」
そう言ってそのハートに一つキスをして笑顔で渡されたら飛影も受け取らずにはいられなかった。
顔を赤らめて受け取った飛影に蔵馬はクスリと笑う。
汗をかいたグラスを飛影のに軽くぶつけて蔵馬は腰を下ろす。
その後姿を改めて飛影は愛おしく思った。
「お、帰ったか。お疲れさん。」
「・・・・・。」
「・・・シカトかよ。」
遠方パトロールの為三日間百足に帰れなかった飛影にねぎらいの言葉をかけようとした躯の声が聞こえなかったのか、飛影はスタスタと自分の部屋に一直線に向かって行った。
勢いよく扉を開け枕元に置いてある鉢植えを覗き込む。
やはりといった様子で早足で飛影は小さな器に水を汲みゆっくりと鉢に傾けた。
ガラス鉢の中の青いガラスビーズの間に水が染み渡ってゆく。
「お前らしくもないな。」
「!!」
「扉を閉めなかったお前が悪い。しかしあの飛影がこんな小さな植物相手にそこまで穏やかな表情をするとは、誰かさんの力は偉大だな。」
「ふん・・・」
「お前に似合わず随分可愛い形の草だな。」
「草じゃない。」
「・・・一生懸命育ててるようだな。」
「二日に一度水をやらんといかんらしい。全く手がかかる・・・。」
そう言いながらもあまり見る事の出来ない表情の飛影に躯は小さく笑う。
「絶対枯らさない。」
穏やかな炎の妖気をまとってそうつぶやいた飛影の眼差しは優しかった。
柔らかな弧を描く緑に水滴が輝いていた。
end.
すんごい微妙な飛蔵・・・というかこれを飛蔵と呼んでいいものかどうか。
「俺と思って」と言われたからには一生懸命面倒みちゃうぜ!!そんな飛影が可愛くてたまらない。
んで人間界の蔵馬の所に行く時は絶対連れて行くの。
「元気だろう?」って見せるの。
蔵馬はこっそりハートホヤから飛影がどんなふうに面倒見てくれてるか聞くの。なんたって植物の支配者(クエスト)だからね。
『時々話しかけてくれるんだよ。』
「あの飛影が?」
『遠くまでパトロール行って帰るの遅くなったら部屋に入ってきて一番に見に来てくれて水をくれるんだ。』
「そっか・・・幸せ?」
『とってもvv』
「飛影。」
「あ?」
「ありがとう。」
「何がだ?」
・・・みたいな!!