薔薇の記憶(過去作品)

□なんてタイトルをつけていいかわからなかったシリーズ
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遠きかの人へ捧ぐ唄




「蔵馬・・・俺の物にならないか?」
「・・・気でも狂ったか。」
「俺は大真面目だが・・・」
「だとしたらなおさら狂ってる。」

次の瞬間蔵馬の視界は反転し、目の前にあるその男の顔の向こうには見慣れた天井があった。
しかし後頭部に感じたはずの激痛は、無理矢理唇を塞がれた為の苦しさに負けていた。
押し込まれた舌を追い返そうとしたが逆に捕らわれた。

「・・・っ!よせっ・・・んぅ・・・」
「・・・っは・・・蔵馬・・・」
「・・・貴様っ・・・」
「邪眼師の事など忘れろ!あいつはもう敵だ。」
「なぜそれを・・・」

思わぬ名前を黄泉の口から聞き蔵馬は目を見開いた。
自らが発したその名前で翡翠が揺らいだ事に黄泉は怒りを感じた。

「俺も一国の王だ。それなりの情報網はある。
もう一つその自慢の情報網で手に入れた事を襲えてやろう・・・躯は女だぞ。」
「な・・・」
「それもかなりの美人だ。
しかも躯の方から邪眼師を呼んだというではないか。
いいか蔵馬・・・あいつはもうお前を想ってなどいない。」
「・・・!」

蔵馬の心拍の乱れを感じ、黄泉は隙をついて軍服を破った。
目前に剥き出しにされた白く華奢な胸に舌を這わせる。
トクントクンと次第に早くなってくる心音が、黄泉に言いようの無い心地良さを与えた。

「・・・俺の物になれ、蔵馬。」
「・・・あっ・・・」
「あいつはもう・・・躯の物だ。」
「そんなはず・・・」
「お前も・・・俺の物だ。」

明らかに動揺している蔵馬のベルトがカチャリと音を立てて外された。
黄泉がそこへ手を滑り込ませようとした次の瞬間・・・

「調子にのるな!」
「・・・蔵馬!」
「貴様に何がわかる!」

払いのけられた黄泉の手にはうっすらと血が滲んでいた。
そして怒りに震える蔵馬の目にもうっすらとそれが滲んでいた。

「貴様が俺の身体をどうしようと・・・心はあの人の物だ。」
「・・・蔵馬・・・」
「たとえあの人が俺を見なくなっても・・・俺はあの人だけの物だ。」

そう言って笑った蔵馬に黄泉は再び捕らわれた。
一筋の涙を浮かべたまま微笑んだ蔵馬が決して自分の物になることはないと感じながら・・・



end


黄泉国王蔵馬強姦未遂事件。(全部漢字)
未遂だからもちろんこの後続きませんでした。
でも実は飛影は邪眼でこれを見ていました。
当時続編を望む声が多かったので連載にしたらしい。
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