薔薇の記憶(過去作品)

□想い焦がれたその時に(過去連載)
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想い焦がれたその時に 1



画面で見ているのがもどかしかった。
駆けつけられる距離であいつが戦っている。
敵になって一年・・・お前の事を考えない日はなかったんだ。
桜が舞い散る中、お前が倒れた瞬間・・・体中の血が凍りついた気がした。
気づいたら何も考えずに走っていた。
ただお前の所へ行きたくて・・・
ただお前を抱きしめたくて・・・

「蔵馬ーーーー!!」

誰かが叫んだ。
俺は声すら出なかった。
黄泉がお前を支えている。
胸が焼ける・・・どうしようもなく熱い・・・
触るな・・・お前なんかが触るな・・・
そいつは俺の物なんだ。
何か喋っている。
何を?・・・何のことを?
お前を残して去っていく黄泉を睨んだ。
奴は気づいている。
この場で殺してやろうか・・・一年間そいつを独占したお前を・・・






「蔵馬!!」
「よかった・・・無事か!」
「・・・・・。」

声が出ない。
俺は何を話したかった?
いろいろ考えていたはずなのに・・・

「飛影、なんか言えよ!」

幽助のその一言に他の奴らが道を開ける。
その先に不安げな顔で立っている。
あぁ・・・こんなに・・・

「・・・・・。」
「飛影・・・」

こんなに愛おしかったのか。
歩み寄ってもまともに顔が見れなかった。
一年間の空白が俺の思考を止める。
血の匂いの中にやわらかい香りが混じっている。
どれだけこの香りを待ち望んだだろう。
さっきまで焼きついていた胸が締め付けられる。
会いたくて・・・会いたくて・・・夢の中でもいいからと願った。

「痛っ・・・」
「蔵馬!!」
「蔵馬、大丈夫か!?」

傷の疼きでバランスを崩したその身体を反射的に支えた。
腕の中にずっと待ち焦がれた存在がある。
あの日、俺を包んでくれていた温もり・・・
あの日、撫でていたやわらかい髪・・・
あの日、触れていた滑らかな肌・・・
こんなにも愛おしい。

「すいません・・・足が疼いちゃって・・・」
「・・・・・。」
「・・・飛・・・影?」
「・・・蔵馬・・・」

慌てて起こそうとするその身体を引き寄せた。
その存在を離したくなくて・・・その温度を失いたくなくて・・・
俺は一年ぶりに愛おしい存在をただただ抱きしめた。



ツヅク



蔵馬vs時雨戦直後のお話です。
決着がついた瞬間を躯の隣で見ていた時からの話。
最近悲恋ばっか書いてたから久しぶりに甘くするつもりです。
続きますよ〜。
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