御伽噺2(蔵馬メイン小説)

□旅立ちの時
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「飛影、貴方だけですから。」

儚げに笑った蔵馬に飛影は思わず目を見開いた。
雪菜の目から雫が落ち、それは眩い輝きを放つ石へと変わる。
ぼたんはついに顔を両手で覆った。

「広い魔界のどこかに貴方が生きていると思って・・・頭の中を、心を貴方でいっぱいにして・・・どんな屈辱にも耐え抜いてみせます。
軽蔑されるかもしれないけど・・・心だけは絶対に・・・っ・・・」

蔵馬の言葉は途中で途絶えた。
誰が見ていようとかまわなかった。
誰になんと言われようとかまわなかった。
その瞬間・・・口づけて、抱きしめたいと思ったから。

「お前はやはり阿呆だな。」
「・・・ごめん。」
「どこにいても、何をしていても、俺の中にはお前がいる。
俺の中のお前は、絶対に汚されない。
今の、綺麗なお前のままだ。」
「飛影・・・」
「今と比べ物にならんぐらい強くなって、お前を攫いに行くから。」
「・・・うん。」

桑原は自分の目の変化を上を向いてごまかした。
幽助はただ満足そうに笑っていた。


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