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□だいすき。
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シエル。
ソファで本を読む愛しい人の名前を呼ぶと文字を追っていた大きな目が俺を映す。
シエルは綺麗だ。目も髪も足も全て。
心が強くて、何者にも屈しない。俺とは真逆のタイプ。
「…アロイス?」
近付いて、さらりとシエルの髪をすく。
細くて柔らかい髪が指に絡まるのが心地よく、しばらく繰り返していると猫のように目を細めてされるがままのシエル。…かわいい。
「シエル」
「…なんだ」
「シエル、シエル」
「…だから、なんだ」
「んー、呼びたかったから」
ちゅ、調子に乗って軽いキス。
シエルは少し眉をひそめたけれど、何も言わない。
ぎゅう、抱き締める。細い体は少年らしくしなやかで、俺の腕に良い感じに収まって、髪からは清潔で優しい匂い。
…大好きなシエルと溶けて混ざり合って一つになれたら。
そんなことを何度考えただろう。
どろどろ。どろどろ。と
しかしどれだけ願っても俺とシエルが一つになれることなどない。
だから、こうしてシエルにくっつく。
シエル、シエル、シエル。
俺の頭のなかは常にシエルで一杯だ。
「ね、好き」
「…ん」
照れた顔を隠すため俯き気味で頷くシエル。
この表現出来ない、溢れ出る気持ちを俺はどうすればいいのか。
駄目、だ。
俺はどうしようもなくシエルに溺れている。
好きで、愛しくて、大切で。
「…どうして泣いているんだ?」
「え?俺、泣いてる?」
「僕の顔に涙がかかってる」
「…ほんとだ」
ぺろりとシエルの顔についてしまった涙を舐めとる。しょっぱい。
「俺、幸せ過ぎると涙が出るみたい」
「馬鹿なこと要ってないで涙を拭け。ほら」
ポケットからハンカチを取りだし涙を拭いてくれるシエルの顔を両手で包み込み、貪るように口付けた。
驚いたシエルが目を見開くが、右手でシエルの目を覆い隠し、舌を入れる。
長い睫毛が掌に当たる感触がくすぐったい。
「…んっ、んーっ」
シエルが苦し気な声をもらすが構わず口内を貪る。
柔らかい舌の感触がくせになり、ずっと堪能していたい衝動に駆られるが、理性が邪魔してそれをさせない。
名残惜しく思いながら唇を離すと、どこか蕩けた顔をしたシエルと目が合った。
ドクリ。心臓が鳴る。
「っいきなり、なにする」
「シエルがあまりにも可愛いからさ。俺、どうしようもなくなっちゃったんだよね」
「なっ…」
火がついたように真っ赤に染まるシエルの頬。
ああ、次はキスだけで済みそうにないな。
逃げようとするシエルを素早く捕まえて、もう一度深く深く口付けた。
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