ぬら孫

□首無の思い
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鯉伴は狐ノ依をリクオと同じくらい大切にしていた。生まれたばかりのリクオの隣に同じように生まれたばかりの状態で眠っていた妖狐。当然、自分の子供のように思っていたのだろう。

「首無、知ってるか?妖狐ってのはな、美人になるんだぜ」

息子を自慢するように狐ノ依のことをよく話してきた。狐ノ依も鯉伴を主のように慕っていたのは見るに明らかで、いつも後ろをぴったりとくっついている様子が見られていたものだ。

しかし、急に鯉伴が亡くなって、活気を失った奴良組の中で唯一いつもと変わらない様子でいたのも狐ノ依だった。
それは、鯉伴が狐ノ依に頼んだからだ。リクオを頼む、と。

狐ノ依はずっと鯉伴の言葉に従ってきたのだ。


・・・


首無は部屋の中からリクオを見つめる狐ノ依に声をかけた。

「狐ノ依、何をしているんだい?」
「リクオ様は…ご立派になったと思って。やはり嬉しいものだね」

ふっと微笑む狐ノ依の横顔はとても美しかった。皆狐ノ依が好きだ。首無も、狐ノ依に魅せられた一人だった。

「…前から、気になっていたことを聞いてもいい?」
「何?」
「狐ノ依はリクオ様が好きだよね」
「うん、好きだよ」
「鯉伴様と重ねているんじゃなく?」
「…え?」

狐ノ依の目が大きく見開かれた。
一瞬、何か言おうと開かれた口はすぐに閉じられる。それから顔を悲しそうに歪めて、狐ノ依は視線を床に落とした。

「どうして、そんなこと言うの?」
「ボク、納得できないんだ。狐ノ依がリクオ様に恋情を抱いていることが」
「そんな…なんで…」
「だって、リクオ様だけずるいよ。ボクだって、狐ノ依に見て欲しい」

首無の手が狐ノ依の頬を撫でた。そしてその手は下に滑らされ、狐ノ依の着物の中へ入り込んだ。

「っ、首無?」
「ねぇ、狐ノ依は本当にリクオ様を見ている?」
「や、めて…わからないよ、そんなこと…」

着物の中に入った首無の手が、狐ノ依の細い腰をなぞる。しかし、それをなんとも思わないのか、狐ノ依は嫌がる様子を見せない。

「狐ノ依…好きだよ」
「困るよ…、え、あっ、何!?」

さりげなく首無の指が狐ノ依の胸の中心を弄れば、狐ノ依の体が縦にはねた。

「鯉伴様を好きでい続けているなら諦めて身をひいたけど…私は…心が狭いみたいだ」
「ボクは…それでも、リクオ様が好きなんだ…。鯉伴様も、好きだったよ、でも…っん」

少しずつ、狐ノ依の息が荒くなってきた。頬も赤くなって、首無の指にしっかり反応していることがわかる。それでも、狐ノ依は嫌がらなかった。

「それに、考えてみなよ。狐ノ依はぬらりひょんの子を産めない。妖狐は妖狐を残すのだろう?深入り…しない方がいいと思う」
「っ…それは…でも、ぁ、あ、ボクっ…」

さすがに狐ノ依の目が大きく歪んだ。狐ノ依自身、わかっていないわけではなかった。自分の特殊さは、リクオといつまでも共にいることが出来ないものであること。

「ぁ、首無…はぁ…なんか気持ち良くて…うずうずしてきた…」
「狐ノ依…」

「…首無?一体何してるのかなー…?」

はっと外の方に目を向けるとリクオが笑ってそこに立っていた。目が、笑っていない。

「あ…リクオ様…自分は…」

首無の言ったことを気にしているのか、狐ノ依が申し訳なさそうに顔を上げる。その紅潮した狐ノ依の顔に、リクオが息をのんだ。リクオは間違いなく狐ノ依に惚れている。惚れている同士、首無の目には間違いなく映っていた。

「狐ノ依も…なんで嫌がらないかな…」
「え?」
「首無に…体触らせてたでしょ」
「あ、はい…気持ち良くて」

首無もリクオも、狐ノ依の言葉に青ざめた。
狐ノ依はそういう行為をわかっていない。恐らく、今首無がその先の行為に出たとしても、素直にされるがままだっただろう。

「駄目だよ狐ノ依!」
「触られたら嫌がってくれないと!」
「え…あ、はい。ごめんなさい…?」



そのあと、狐ノ依はリクオに引き取られていった。
狐ノ依は最後までリクオを好きだと言い張ったが、迷いは生じているようだった。鯉伴を好きでいた事実は否定しなかった。

「でも、私に望みはない…か」

ふぅ、と小さく息をつくと首無はその場を後にした。
一層深くなってしまった狐ノ依への思いに苦笑しながら。


(終)

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