NARUTO

□我愛羅奪還
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カカシ班は任務を受けるために綱手の元に集まっていた。

「そんな任務ノーサンキューだってばよ!」
「あん!?何か文句あんのか?」

体は成長したものの、中身は昔のままのようで、ナルトは先ほどから文句ばかり言っている。火影である綱手の額に血管が浮き出る様子に、サクラははらはらしているようだ。

「ナナからも何か言ってやってちょうだいよ」
「は?なんで俺が…」

ナルトに困り果てたカカシがナナに振ると、ナナに視線が集まった。このメンバーの中では確かに少し大人ではあるが、こういう面倒事ばかり押し付けないで欲しい。
はぁ、と息を吐いてから、ナナはナルトに視線を送った。

「…な、なんだってばよ」
「いや、ナルトはどう思ってんのか知んねぇけど…。俺はこのメンバーで任務出来んなら、なんだっていいんだけどな」

きゅん。という効果音がその場にいた人間全員から発せられた。

「ず…ずるいってばよ…」
「ナルト、負けを認めなさい」

うぅ、と言って頭を下げたナルトを見て綱手も安心したように目を閉じて笑った。
それからカカシもナナを見て目を細める。以前のナナならきっとこんなことは言わなかった。
今の、たぶん本心なんだろうな…と思うと急にナナが可愛く見えて来て。

「カカシ先生?なんか手の動き気持ち悪いんですけど」
「ん?あぁ、気にしないで」
「…」

サクラとナナの冷たい目を浴びながらカカシはへらっと笑った。




「た…大変です、五代目!」

火影の元に来るとは思えないような、乱暴な勢いで扉がばたんと開いた。そこに立っているのは暗号班の女性で、急いで来たのか肩で息をしている。

「何だ?騒々しい」
「砂隠れの風影が暁という組織の者に連れ去られたと…たった今連絡がありました!」

この報告に一番反応したのはナルトだった。
ナナにとっては、ナルトを狙っている連中が動き出した、という解釈しか出来なかったが、ナルトやサクラは違う。
風影は中忍試験時に会った我愛羅。二人には面識があるし、ナルトは我愛羅と戦い、認め合った間柄だった。

「…これよりカカシ班に任務を言い渡す」

直ちに砂隠れの里へ行き、状況を把握し木ノ葉に伝達。その後砂隠れの命に従い彼らを支援しろ。

サスケの抜けたこのメンバーでの久々に行う任務は、とても重要な任務になってしまった。


・・・


「じゃ!いってくるってばよ!」

すぐに準備して、カカシ班は出発した。
出発時にナルトは自来也に何か言われていたが、微かに暁、という単語が聞こえた当たり、狙われているのだから気をつけろ、とかそういうことだろう。



砂に向かっている間、ナナはカカシの横についた。

「なぁ…」
「ん、なぁに?」

早く我愛羅を助けたいという思いがあるナルトは既に少し離れた先の方にいる。無意識にそれを確認してから口を開いた。

「暁ってやつ、ナルトを狙ってんだろ?なんで風影が連れ去られなければならなかったんだ?」
「んー…」
「それって皆どこまで知ってるもんなんだ?知らないの、俺だけ…?」

ナルトの秘密。これはナナに限らず、ほとんどの人間が知らないものだった。言ってはいけないということではない。しかし、カカシから言うべきことでもないのだ。

「それってさ、何。信用されてないわけ?頑なに口閉ざす意味…わかんねぇ」

何か事情があるのはわかっても、仲間外れにされているような感覚がナナにとっては不服だった。それでなくても、共にいる時間は一人少ないというのに。



「ナルト!急いでるからって、隊を乱さないで!」

前から聞こえてきたサクラの声。はっとしてカカシとナナがそちらに目を向けると、ナルトが一人先に行っている姿が見えた。
話をしていた二人は少し遅れてしまっていたためにスピードを上げて追いつく。

ナルトが何か訴えているのが聞こえてきた。

「サクラちゃんも…もう知ってんだろ?オレの中に、九尾の妖狐が封印されてんの…」
「…?」

どういうことだ。疑問が口から出そうになる。
しかし、ナナはサクラとカカシの表情が固くなったのに気付いて、何か言いそうになったのを堪えた。


「我愛羅もオレも…バケモノを飼ってるからな…あいつらはそれを狙ってんだ」

バケモノ。つまり、九尾の妖狐って奴のことだ。そして、あいつらとは…恐らく暁のこと。

「気に食わねぇ!その、オレたちをバケモノとしか見てねぇ、あいつらの好き勝手な見方が…!」

いつの間に、ナルトはそんなことに巻き込まれて、そんな風に思うようになっていたのだろう。
ナナは顔を伏せて、ナルトの思いを受け止めようとしていた。



「ねぇ、ナルトは逢ったことあるんでしょ?うちはイタチに。それで、彼に狙われてる」

今度話出したのはサクラだった。

「サスケくんが殺したい相手って、実の兄、暁の一員のうちはイタチのことでしょ?それで力をつけようと…大蛇丸の元に行った」

ここからはナナにもわかる話だった。サスケは大蛇丸の元へ行ったが、本当の大蛇丸の狙いはサスケの体。あと半年で、サスケは大蛇丸の体の器にされてしまう。

「つまり…暁に近付けば大蛇丸の情報も入る。それでサスケくんにも近づける。そういうことよね」

ナルトもサクラもずいぶんいろいろなことを考えていて、それはナナよりも、もっと大人に見えた。この、砂隠れに行くという任務に対しても、そういう思いを持って向かっている。
ナナは何もわかっていなかった自分に申し訳なくなっていた。

「…かっこいいな、ナルトも、サクラも」
「ナナさん…?」
「志あって動いてるんだもんな…」

自分には何もない。そう、思わされてしまった。

五色のことも中途半端に戻ってきて、だからといって木ノ葉で何かしなければならないこともあるわけじゃない。

「ナナには、ナナにしか出来ないことがある」
「カカシ…?」
「自分にしか出来ないことがある人間はそういない。それだけでも、ナナはかっこいいよ」

気を遣ってくれた。
こんな風に、すぐにフォローの言葉を出せる人間もそういない。とは思いつつも、そんなこと言ったらカカシは調子にのるだろうと、ナナは何も言わなかった。



・・・



砂につくと、暁のサソリという男にやられて毒に侵されているという、カンクロウの治療に向かった。カンクロウは我愛羅の兄、そしてそこまで案内してくれたテマリは我愛羅の姉だった。

「私が見ます!」

一歩前に出たのはサクラ。サクラは医療忍者である綱手を師匠に持っていたため、いつの間にか医療忍術も使えるようになっていた。

医療室に入ると、カンクロウを囲んでいる者が何人か。

その中の一人、年老いたおばあさんがカカシの姿を見た途端に目を光らせた。

「…木ノ葉の白い牙!息子の仇…!」

急にカカシに突っ込んでくるおばあさんの攻撃をナルトが相殺する。ナナもカカシを庇うように、カカシの前に出ていた。


「姉ちゃんよ、よく似ているが、こいつは白い牙でねーよ」

その横にいたおじいさんがそう言うと、おばあさんはボケたフリだと笑ったが、明らかにカカシを殺すつもりで突っ込んできていた。

「なぁ、カカシ?木ノ葉の白い牙って…?」
「あぁ、オレの父親だよ」
「悪い奴だったのか?」
「いやぁ…そんなことはないと思うけどね」

砂と木ノ葉が正式に同盟を結んだのは、二年前の中忍試験後。大蛇丸によって騙された砂が、木ノ葉に借りを返すと協力するようになった頃だ。
昔は争っていたのかもしれない。


そんなどうでもいいやり取りをしている間にも、サクラは毒抜きを終わらせて、これからの戦闘にも備えて出来る限りの解毒剤を作りにかかっている。

「サクラ、すごいな」

ぼそりと呟いた言葉はサクラにも届いてしまったようで、振り返ると照れたように笑ってみせた。


向こうでは、カカシが情報を集め始めている。赤砂のサソリ。元々砂隠れの忍で、今さっきカカシに攻撃してきた、おばあさん、チヨバアの孫だという。

「うずまきナルト…弟を頼む…」
「負かしとけってばよ!オレもいずれ火影になる男だからな、風影に貸しつくっといてやる」

そしてナルトは、カンクロウに直接頭を下げられて、信用を得ている。それも、我愛羅と同じ、尾獣持ちだからなのか。


「俺にしか…出来ないこと、か」

五色という名前に頼らずに出来ることはないのだろうか。

ナナは自分の手を見つめて、それから強く握り締めた。役に立ちたい、純粋な思いだった。


・・・


出発準備が出来て、暁を目指そうとするカカシ班の横には、何故かチヨバアも一緒にいた。
なんでも、孫を久しぶりに可愛がってやるのだそうだ。

目的地に向かう間、再び尾獣の説明を受けることになった。あまり詳しくは知らないサクラとナナと違って、カカシと、特にチヨバアは相当詳しく知っているようで。
ナナには違う世界の話にも聞こえたほどだった。


尾獣は一から九まで、尾の数が違う獣がいて、人間の体に封印される。そうでもしないと強大な力が抑えられないから。
九尾は昔、木ノ葉で暴れ多くの死者を出したこともあり、完全に極秘扱いされているほどだった。
暁の狙いは、その全ての尾獣を集めることにある。集めてどうするかということまでは、まだわかっていないが。それが集まってしまったときの力の大きさは計り知れない。


「なんだかな…俺にはよくわからない」
「まぁ、ね。これを理解しろとは言わないよ。今は暁を止めること、それが出来ればいいんだ」
「…ん」

そう言われてしまうと悔しくて、ナナは少し唇を尖らせた。

「ナナ、あまり深く考える必要はないんだからな」
「な、そんな念押ししなくていいだろ…」
「ナナが、気にしてそうだったからね」

カカシはよく見てる。それは嬉しいのだが、見透かされていると思うとそれもまた悔しい要素に変わって、ナナは素直に頷けなかった。




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