NARUTO
□本選
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ナナは一足先に本選会場に着いていた。
かっこよく登場するから見ていて欲しい。カカシがそう言ってナナの背中を押したからだ。
会場は小さな囁きが集まって騒がしくなっている。
それもそのはず、試験開始時刻になってもサスケが現れていないことが原因だった。
「で…お前さんは何なんだ?」
「時間稼ぎだ」
「…はぁ」
試験官である不知火ゲンマは、ナナの様子を見て頭を押さえた。
時間内に間に合わなければ、サスケはその時点で失格になってしまう。ナナはその時間稼ぎをついでに任されていた。
「もう直に来るから、もう少し待てって言ってんだよ」
「いやいや…そう言われてもな…」
既にサスケの対戦相手である我愛羅の戦う準備は出来ている。
観客達もいい加減痺れを切らしてきた頃だ。
しかし、サスケはあの木ノ葉のナンバーワンルーキー。サスケ目当てに見に来た者もいることだろう。
なんて融通を利かせることはゲンマの仕事ではない。
「こっちも仕事だからな、時間制限ってのがあるんだよ」
「対応能力ねぇのかよ…大人だろ」
「そういうお前さんは子供なんだからもうちょっと…大人に対する態度ってのをなぁ」
「ちっ…」
ナナはゲンマから視線を逸らすと小さく舌打ちをした。
それに気付いたゲンマの眉がぴくりと動く。
しかし、その舌打ちはゲンマに向けて放たれたものではなかった。
ナナは嫌々そうな空気を醸し出しながら、自分の腰から刀を抜いている。
「おい、何するつもりだ」
「…」
「おい、五色ナナ」
何をしようとしているのかはわからないが、五色ナナは五色から捨てられた荒くれ者として知れている忍だ。
ナナの刀の切っ先が光るのを目にしたゲンマ、思わず戦える体勢をとった。
「ふっ」
ナナが空気を吐き出す。
何をするのかと思えば、ナナは手にしていた刀を会場の中心に投げていた。
それは綺麗に地面に突き刺さる。
「…あぁ?」
ゲンマは口に咥えていた千本をぽとりと落としていた。
何せ、その刀が刺さった地面からは、激しい炎の渦が立ち上がっていたからだ。
「…何してるんだ?」
ゲンマは驚きの表情のまま、正面で背中を向けるナナに問いかけた。
当然、観客達も突然の出来事に困惑している。サスケの登場が遅い事にざわついていたのは一変し、ナナの不可解な行動に注目が集まっていた。
「…イリュージョン」
「何て?」
「という名の時間稼ぎ…」
ふいっとナナの顔が逸らされた。
顔はうかがえないが、辛うじて覗く耳が赤くなっている。
確かに、印を結ばない状況からこれほどの炎を出すのは普通なら不可能なことで。イリュージョンと言われればそう見えるが。
「…お前、結構面白いな」
「わ、笑うなら笑えよ…!」
ゲンマは口元を押さえてくっくと笑った。
カカシの元についているとは聞いていたが、なるほどこれは面白い奴ではないか。
「あー…っくそ。早く来いよカカシ!」
自ら投げた刀を回収しに行きながら、ナナは羞恥心から嘆いていた。
カカシの頼みとはいえ、何故素直に聞いてしまったのか。
「こんなことに使って、ごめんな」
すっと地面から抜いた刀に指を這わせ、顔を寄せる。
五色から頂いてきた唯一の宝。
ナナは丁寧にそれを鞘に戻すと、大きく息を吐き出した。
その時、この場にあるはずのない葉が目の前を掠めた。
「…遅ぇよ」
ぽつりと呟くそのナナの前、大量の葉が渦巻いているその中に人影がある。
姿はよく見えないが、それはカカシとサスケで間違いなかった。
「…カカシのかっこいいってそれかよ」
「いやぁ、遅れてすみません。どう?ナナ、かっこよかったでしょ」
「ねぇよ」
反省する様子などほとんど見られない、カカシはいつも通りの軽い笑みを浮かべいる。
ナナは軽くカカシの足を蹴り上げると、そのまま客席の方へ戻って行った。
「いたっ…あ、もしかして間に合いませんでした…?」
カカシは恐る恐るゲンマに視線を向けた。
そのゲンマは、再び千本を咥えて笑っている。
「あれ…五色ナナのおかげでセーフですよ」
「それはそれは…」
「なかなか可愛い子じゃないですか」
後でお礼を言わなきゃな。
カカシは観客席のどこかに隠れてしまったナナを思って柔らかく笑っていた。
これからサスケと我愛羅の戦いが始まる。
そしてそれは一つの戦争が始まる時を知らせるものでもあった。
・・・
サスケと我愛羅の戦いは過去に見たことがないくらい異常だった。というより異常なのは我愛羅だ。
我愛羅は、ある時から砂の殻にこもり、攻撃もしなければサスケの攻撃も効かなくなっていた。
暫くサスケはその砂の壁へ攻撃を試したが、何をしても無意味で。すぐにそれが絶対防御だと判断出来た。
壁の上の方まで行き、我愛羅との距離をとる。サスケの千鳥発動の合図だ。
「ナルト、よく見てな」
「な、なんだってばよ…」
「サスケの修業の成果、新技が見れる」
ナナは横に座るナルトを見て、自分の手のひらをとんとんと叩いた。
手のひらから激しいチャクラを放つ術、千鳥。カカシの術、雷切のもう一つの名だ。
「新技…それって、すげぇのか」
「あぁ」
会場に響き渡るチチチチ…という甲高い音。
サスケは千鳥を発動したまま我愛羅の絶対防御に突っ込んでいった。
サスケの千鳥か、我愛羅の絶対防御か。
我愛羅を見ている砂の忍も、サスケを見ているナルト達も、息の呑んでその様子を見守った。
「…サスケの千鳥が上回ったな」
「え?」
「よく見ろ、砂の壁が割れてる」
見た目の通り千鳥の威力は強く、絶対防御を突き破っていた。
ナルトもサスケの新技を目の当たりにして、肩を震わせている。圧倒的な力、千鳥という術。
ナルトにはない、必殺技と呼べるに相応しいものだった。
しかしその瞬間から…何か異様なチャクラが我愛羅から漏れ出していた。
「なんだ、アレは…」
砂の中から出てきた不気味な腕。人間のものではない、化け物の腕が砂の殻から突き出ていた。
「ナナ!」
「、カカシ?」
急にカカシがナナを抱き寄せた。
何が起こったかわからないナナはされるがままカカシの腕に倒れ込む。
「何…」
「攻撃を受けてる!」
驚いて顔を上げると、周りの人間がほとんど眠りについていた。
この会場全体にかけられた幻術のせいだ。
ナナが寝ずに済んでいるのは、カカシが術の解除を行ったからだった。
「攻撃?なんで、何に…」
「わからない…が、恐らく砂が仕組んでいたんだろ」
「砂…?」
既に敵と思われる忍者たちが攻撃を開始していて、至る所からクナイのぶつかる音がしている。
この中忍試験の始めから、砂の忍はこの作戦を練っていたというのか。なんの為に。
「サスケと、我愛羅の戦いはどうなる?」
「もう中止だよ。それに、我愛羅は他の砂の忍に連れられていなくなった」
「…まじかよ」
そんな、あからさまな。
我愛羅に何かあるのだと感じていたカカシは、既にナルトとサクラとサスケに我愛羅を追うように指示を出していた。
もうカカシと話している余裕すらない。
その間も敵の攻撃は止まず、ナナは刀を抜いて応戦するしかなくなっていた。
「ちっ…うぜぇ!カカシ、技使っていいか?」
「…え?」
カカシの返事など待たず、ナナはチャクラを刀へと流し込んだ。
ナナの目と刀が緑色に変わる。すると、風が向かってきた敵を舞い上げ切り裂いた。
「おお…」
「カカシ!俺は何をしたらいい」
「…ナルトたちを追えるか」
「あぁ」
ナナは刀を強く握るとぱっと飛び出して行った。
・・・
ナルト達がいなくなってからそれほど時間は経っていない。
ナナは速さには自信があったし、すぐ追いつけると思ってスピードをあげた。
しかし、そこに誰かの人影があることに気付き足を止めざるを得なくなった。
道を塞ぐかのように動かず立っている影。
敵か、味方か、判断できずに目を凝らして唾をのむ。
「…てめぇは…」
「やぁ、また会えたね」
それは、一度だけサスケの修業中に町であった男、カブトだった。
カブトがゆらりとナナに近付く。
ナナは何をするつもりなのか分からないその男の行動を待ってしまった。
「会いたかったのよ…五色ナナくん」
「…懲りねぇ奴だな」
近付いて来たカブトの手がほんの少しナナの体に触れる。
それを叩き落とそうとしたナナは驚いて目を見開いた。
「…!?」
既にナナの体のほとんどが言うことを聞かなくなっていたのだ。
「っな!?」
「逃げないでくれて有難う。ま、逃げても捕まえたけどね」
「どういうことだ、これ…」
動くのは指先と首程度。思い通りに機能しない体にナナが歯を食いしばったとき、カブトはナナに口付けていた。
「っん!?」
唇を離すと、ナナの目には今までの顔がニセモノだとはっきり分かる程の、嫌らしい笑みを浮かべたカブトがそこにいる。
そのカブトが指でナナの首を突くと、途端に息が出来なくなった。
「は、ぁ…あ、何、を…」
「これはね、医療忍術の一種なんだよ。どう?動かなくて苦しいだろう」
そう言いながら、カブトはナナの服に手をかけた。抵抗出来ないナナの下半身は簡単に晒されていた。
「て、めぇ…!」
「大蛇丸様のお気に入りの味、試させてもらうよ」
「く、…や、め」
無理やり体を後ろに向かせ、木に手を付かせる。その体勢から自分が何をされるかなんて容易に想像がついた。
しかし、分かったところで動けなくては意味がない。
「ぐ、ぁ…ああ…!」
全く慣らしていない状態の穴に、カブトの指が無理矢理押し込まれていた。
痛さにナナの体が小さく震える。木に爪が刺さる。
「ここ、広げたらすぐに挿れてあげるから」
「や、め…はぁ、あっ」
過去に経験のあるナナのそこはすぐに広げられていく。
痛みだけじゃない、悔しさ、怒り、いろんなものの混ざった涙は顔をつたって地面に跡を残した。
「初めてじゃないね、もしかして…はたけカカシともうやった?」
「す、るか…てめ、らとっ、一緒に…ぁ、すん、なっ」
「いいね…壊したくなるよ…」
ぐ、とナナの腰を引き寄せて、カブトのものがナナの中にねじ込まれる。
「あああっ…!」
悲鳴に近いその声を聞いたものは一人もいなかった。
近くで起こっている、一尾と巨大なカエルという化物同士の戦い故に人の声など周りには届かない。
「はっ…君もバカだよねぇ。狙われているのに、一人きりになるなんてさ」
「く、ぁ…」
「もう声を出す気力もないか。脆いね、本当に」
犯され続けたナナは意識を失ってそこに倒れていた。
乱れた髪に、頬をつたう涙。脱がされた下半身はカブトの精液によって汚れた状態。それを発見したのはカカシだった。
カカシが発見したのは、もう全てが終わった頃。
砂の襲撃は大蛇丸が仕組んだことで、火影は大蛇丸との戦いで亡くなった。その全てが明らかになった後の事だった。
→
2012/12/17(改訂)