NARUTO

□扇風機
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〇扇風機 /サスケ(新時代長編主)



からから、と軽い音がずっと鳴り続けている。
便利な時代になったものだ、と小言を吐けば、ナナは案外悪くはないぞと笑った。
それはそうなのだろう。
しかし、ずいぶんと長い間里を離れていたサスケにとっては大きな変化ばかりだった。

「…涼しいのか、それは」
「ああ、涼しい」

低い位置でくるくると回るソレの高さに合わせて、ナナが胡坐をかいている。
羽のようなものが高速で回っているらしく、確かにナナの髪は風に吹かれて揺れた。
後ろに立つサスケの位置からは、めくれた首筋が映る。

「…それでいいのか」

表情の見えないナナに、そう問いかけたサスケは、立ったまま腕を組んだ。

「それって、どれだよ」

ふはっと口を開いて笑うナナは、やはりこちらを振り向こうとはしない。
時代は変わったのだと、誰もが口にするようになった。
そう思いたくない、そうは思わない。けれど、現実木ノ葉の里は随分と姿を変えた。

「それくらいの風なら、お前の風遁で作り出せるはずだ」
「…まあ、そうだな」
「そんな機械に頼ってばかりで、いいのか」

一歩、ナナに近付く。
ナナは小さく肩を揺らして振り返った。

「……休みたいと言ったのはお前だろ、サスケ。我が家に来て文句を言うのは止めろよ」
「文句を言いたいのはお前に見えるがな」
「…やっぱり、可愛げねーな、お前は」

はあっと息を吐いて、ナナは眉を下げた。
地面に落とした視線を右へ左へと動かし、静かにその機械の動きを止める。
ボタン一つだ。

「きっと、五色は必要なくなる。そういう時代が近付いてきてる」
「…」
「ま、そこそこ出来る俺はともかくー…生活を助ける程度の五色は姿を消すだろうな」

口元の笑みに反して、ナナの目元は微かに揺れていた。

「って別に初めから…必要なんて、されてなかったけど…」

拳を強く握りしめたナナの声が震える。
その押し殺したような声に、サスケは組んでいた腕を解いた。

「…科学の発展を目指す奴等の目的が、いかにチャクラを使わずに…だから仕方ねーよ」
「…だから、それでいいのかと」
「いいんじゃねぇ?俺には関係ない」

しかし、また取り繕うように笑ったナナが再びサスケから目を逸らす。
そうやって強がるナナにまたサスケは一歩近付いて、けれどナナの口から漏らされた重いため息に、ぴたと歩みを止めた。

「って…言ったらウソかな」
「ナナ…」
「お前、可愛げねぇけど…やっぱすごいな…なんで気付くかな」

ぼそぼそとサスケの耳に辛うじて届く程度の声で。
ナナは不服そうに、けれどやはり口元には笑みを浮かべている。

「…はあ」
「ナナ?」
「サスケ。抱きしめてやるから、こっち来いよ」
「…」

体をサスケの方へと反転させ、ナナは両手を左右に開いた。
いつか、自分が好きだと言ったことを、こういう形で持ち出されるとは。
サスケは馬鹿なことを言うなとため息を吐き、伸ばした手をナナの頭の上に乗せた。

「ナナこそ、オレが抱きしめてやるよ」
「…は」
「本当は、ずっと吐き出したかったんだろ?」

観念したかのように零れ出したナナの本音。
それはきっと、ナナが押し殺して来た感情だろう。

「…ほんと、お前…可愛くねーな…」

サスケの手をぱしっと手で弾き、ナナは上目でサスケを睨み付ける。
その鋭い目つきは相変わらずだが、すっと立ち上がったナナは素直にもサスケに肩に顔を寄せた。

「どいつもこいつも、デカくなりやがって…」
「アンタは、増々可愛くなったな」
「うっせぇ、今日は特別だ…」

すりと頬をサスケの肩に押し付け、手は静かにサスケの胸に重ねられた。
いつも傍にいられないからこそ、強がりでいじっぱりなナナにとっては縋りやすいのだろう。
サスケはナナの髪に指を通し、満足気に微笑んでいた。




2015/08/30
 

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