NARUTO

□全てを知る者たち
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サスケとイタチと、そしてカブト。
つい先程まで、彼等の激しい戦いが行われていた。
それは事実であるというのに、あまりの静けさにナナは一度辺りを見渡した。

うちはの力は主に幻術…だからか、もしかしたら思っていたよりも静かに決着がついていたのかもしれない。


「…サスケ、大丈夫か?」

そう問いかけていたのは、サスケが茫然と立ち尽くしていたからだ。
復讐を果たした相手との共闘。サスケにとってうちはイタチとはどのような存在となったのだろう。

「カブトは…死んだのか?」

答えがない、けれど再び別の質問を投げる。
腹から大きな蛇を出した状態のまま動かないカブトは、生きているように見えるが全く動かない。

「うげぇ…これがカブト?何かキモいね」
「あぁ…今更自己嫌悪でどうにかなりそうだ」
「え、何?自己嫌悪?」

水月が隣に来てナナと同じようにカブトを覗き込む。
これに虐げられていたと思うと苛立ってどうにかなりそうだが、もうそれも無いのだ。
ようやく解放された。

「サスケ、ありがとな」
「別に、お前の為にやったわけじゃない。これで穢土転生は止まった…」

これで戦況も大きく変わることだろう。
しかしそれまで静かにしていた重吾が、それを聞いて口を開いた。

「穢土転生が止まった…と言ったが、マダラとかいう奴の穢土転生は止まっていないようだぞ」
「…!」

驚いて目を開いたのはナナだけだった。
重吾は傍を飛んでいる鳥を見上げたまま、他には何も言わない。
うちはマダラがこの戦争の根源だ。彼が消えていないということは、まだまだ戦いは終わらないということになる。

「うちはマダラは既に死んだ、過去の人間なんだろ?なのに、どうして…」
「そこまでは分からない」

ナナの問いに重吾は顔色変えずに答えた。
そしてサスケもまた、冷静を保ったままだ。
何を考えているのか、どこか遠くを見て。

「サスケ…?」
「そんなことよりもサスケ!すっごいもの見つけたんだよ!」

そんな空気を読む気もないのか、それともただ鈍感なのか。
ずいっと前に出た水月は黒い装束の内側から一つの巻物を取り出した。

「なんだ、わざわざそれを見せる為にオレのところに来たのか」
「そうだよ!いいから、早く見てみてみ!」

そういえば“鷹”の全員は今この瞬間までバラバラになっていたのだ。
感動の再会の一つも思わせない彼等の冷め具合は忍として良いのかどうなのか。
水月はぐいと巻物をサスケに押し付け、サスケはそれを素直に開いた。

「水月、なんなんだ、その巻物は」
「ナナも知りたい?」
「…興味はある」
「ふふん、ナナが鷹の一員になるなら教えてあげてもいいよ!」

水月の軽い態度に少し呆れつつ。
巻物に目を通したのだろうサスケが立ち上がり、ナナは再びサスケに視線を戻した。

どうするつもりなのか。この戦争に関わる気はあるのか。
木ノ葉に戻る気はあるのか。

「全てを知る人間…」
「サスケ?」
「…とりあえず、会わなければならない奴が出来た」

サスケはやはり冷静に、巻物を自分の懐に仕舞うと重吾に近付いた。
重吾はさっきの場所に寝かされていた木ノ葉の忍、みたらしアンコを拾ってきていたらしい。
足元でぐったりと眠ったままのアンコは相変わらず目覚める気配がない。

「そいつを使って大蛇丸を復活させる」
「…は!?」

サスケの目は、そのアンコに向けられていた。
しかし、その発言には理解出来る点があまりに少なすぎた。

「何、言ってんだ、サスケ」
「あの胸クソ悪い大蛇丸に会ってでも、やってもらわなければならないことがある」

そう言うが早いか、サスケはアンコの腕を引いて上半身を起き上らせた。
そのアンコの首元を開ければ、妙な形の刺青のようなものが浮き上がっている。

「ちょっと待ってよサスケ!その巻物の力くらい、君なら時間をかければ使えるようになる!」
「大蛇丸でなければ出来ないこともある」
「君は大蛇丸をナメてる!復活したらまた…君の体が狙われるし!戦争にだって乗っかるに決まってる!」

既に着々とその“復活”の準備を始めているサスケだが、どうやら水月も大蛇丸復活には反対らしい。
ナナも咄嗟にサスケの腕を掴んで引き止めていた。

「サスケ、俺も大蛇丸を復活させるってのには反対だ」
「ナナ、何をそんなに恐れる?」
「…サスケこそ、どうしてそんなに平気なんだよ」

サスケは強くなった。
けれど、大蛇丸がいかに危険かは別の話だ。

「ほら、ナナだってそう言ってる。サスケ、大蛇丸は駄目だよ!」
「少し黙ってろ水月。それより、そこのカブトの体の一部を抉って持ってきてくれ」
「え…人の言う事聞かないのに、人が言う事聞くと思う?」

珍しくまともな事を言っている水月の後ろで、重吾がサスケへの協力を始める。
重吾はサスケの意志に従うようだ。

「…サスケ、本当に大丈夫なんだろうな…」
「そんなに大蛇丸が怖いなら、オレの傍にいろ」
「それはそれで怖いっつの…」

カブトの一部をアンコの首元にくっ付ける。
既にナナにはサスケが何をしているのか分からず、見守ることしか出来なかった。
悔しいが、やはり会いたくないという思いから、距離をとっている水月の隣に移動する。

「そういえばナナも大蛇丸に好かれてんだっけ?」
「好かれて…ってそんな単純なことならいいけどな…」
「え?何?複雑なの?」
「知らねーよ…」

動かないカブトの後ろでこそこそと二人小声で交わす。
そんなことをしている間に、サスケの手がその異様に膨らんだアンコの首に当てられた。

「…っ」

大きな蛇がサスケの手に引きずられるように飛び出してくる。
大きく開いた蛇の口から覗く黒い髪の毛。
それは、紛れもなく大蛇丸のものだった。


「まさか君達の方から私を復活させてくれるとはね」

ずるりと蛇から出てきた大蛇丸は、まさに“復活”したと言わざるを得ない、生きていた時のまま。
目の前に現れた大蛇丸にびくりと震えたナナと水月を気にすることなく、サスケは大蛇丸に近付いた。

「大蛇丸、アンタにやってもらいたいことがある」
「アンコの中でずっと見てたから、分かってるわ」

全てお見通し、大蛇丸は自ら手をサスケに伸ばした。
サスケもその手の意図が分かっているのか、巻物を大蛇丸へと渡す。

「…彼等に会ってどうするつもり?」
「オレは…あまりに何も知らない。奴等に全てを聞く」
「復讐を迷っているの?」
「違う。ただ…イタチとは、一族とは、里とは…?全てを知り、自分で考え答えを出し、己の意志と眼で成すべきことを見据えたい」

サスケの心が分からない。ついでに大蛇丸の考えも。
口を出せる状況ではなく、ナナはただ二人を見ていた。

「…ナナ君、そんな目で見なくても大丈夫よ。他人の始めた戦争になど興味はないから」
「え…」
「興味があるとすれば、サスケ君の若い体くらいのものよ」

元々木ノ葉を潰すつもりでいた大蛇丸の言葉とは思えなかった。
一番の不安要素といえば、大蛇丸が戦争に加担してしまうこと。
信じて良いのかは、大蛇丸の目を見れば分かる気がした。

「せっかく美しかったのに…貴方はカブトに散々汚されてしまったわね」
「な…!」
「一応言っておくけれど、人の体を扱うことに関してはカブトの方が優秀だった。カブトに目を付けられたのが運の尽きね」

そう言いながら大蛇丸が近付いてくる。
こちらに伸ばされる手から、ナナは逃れることはしなかった。
立ち尽くしたまま、頬に触れた大蛇丸の手を受け入れる。

「でも…そもそもはアンタが、俺に変なものを植え付けなければ…っ」
「それは貴方が美しかったのだから、仕方ないでしょう」
「な、んだよそれ…!」

今の大蛇丸は何故か恐ろしくはない。
けれど、やはり理不尽だ。そんなことを理由に、ナナは散々な目に合ったのだから。
ナナはぱしんと大蛇丸の手を弾き顔を背けた。

「やっぱり、アンタは信じられない」
「ふ…そういうところも可愛いわね」

にぃっと笑う顔は不気味で、それを含めても大蛇丸と共に行動というものは拒否したい。
けれど、ナナの意志など関係なく。
大蛇丸はサスケの正面に立つと、片手をすっと挙げた。

「サスケ君、協力するわ。行きましょう」
「言っておくが、ナナに手は出すなよ」
「出さない…というより出せないわね。サスケ君の前では」

目の前でそういう会話は止めてもらいたいものだ。
ナナはサスケと大蛇丸の会話を聞いて、胸を撫で下ろしながらも盛大にため息を吐いた。

「え?何?ナナモテモテ?香燐がいたら超シュラバってやつ?」
「水月…お前もう黙れ」
「なんで!?」

そして再び空気の読めない男の頭にはグーをぶつけてやった。




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