NARUTO

□友
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木ノ葉の里は暁によって壊滅状態。
その復興作業を行っていたナナの元にやってきた雷の国、雲隠れの里の忍二人。年はナルト達と同じか少し上くらい、といったところか。

ナナの首元に当てられたクナイは、敵対心剥き出しの男の手に持たれたモノ。
それに驚くでもなく、心当たりのあったナナはやはりこうなるのかと息を吐き出した。

「…詳しい説明を要求したいんだけど」
「お前を見たってヤツがいる!お前等がオレ達の里を襲ったんだろ!」

雷の国。確かにサスケ達と共に行動している間訪れたところだ。そして、そこにいた八尾をサスケが倒した。
それだけわかっていれば、彼らの目的は自ずと見えてくる。

「確かに、サスケは八尾の捕獲をした…けど」
「言い訳なら短めにしろよ」
「俺、その時記憶が無くなってて…それでサスケに使われてたんだ」

少し視線を下げて、ついでに眉も下げる。
ナナの言う話は真実とは少し違うものの、決して間違っているというわけでもない。

「はぁ?んなこと信じると思ってんのか?」
「俺の言葉が信じられないなら、火影様にでも聞いてくれ。俺が記憶を失くしていた事についても知っているはずだ」
「…」

木ノ葉にはいない、雷の国特有の色の濃い肌。飴のついた棒を咥えながら器用にしゃべる男は、疑いの目をナナに向けるのを止めなかった。

しかし、こんなありがちな、同情を誘う為の作戦はまんまと成功した。

「おいオモイ!放してやれよ!」
「え!?」

ばしっと力づくで、女の方がオモイと呼ばれた男の腕をナナから引き剥がす。
腕どころか体ごとナナから離れた男の代わりにずいっと近付いた女は、ナナの手を握り締めて顔をうっとりとさせた。

「大丈夫だったか…?」
「あ、あぁ」
「おい、カルイ。お前イケメンに媚売るつもりだろ!ずりぃぞそんなの!!」
「うっせー!オモイは黙ってろ!」

他国の忍というだけあって、ナナも争いを避けようと頭を働かせていたが、どうやらそんなことを考える必要もなかったらしい。
なかなか年相応に面白い連中のようだ。

「サスケが襲った八尾はウチらの師匠なんだ。だから、何か情報があれば教えて欲しい」
「…サスケに復讐したいってことか」
「おい、カルイ!そいつの言うこと信じるのか」
「そもそも、こいつは五色の人間だ!傷つけるわけにはいかねーのわかってんだろ!?」

サスケが八尾を倒した、という状況を監視していた雲隠れの忍は、ナナが五色であるということも把握していたのだろう。
カルイもオモイも、ナナが五色であることを端からわかっていたように見える。

「なぁ、何か知らないか?」
「…俺は、サスケが暁で…暁が尾獣を集めている、ということしか」
「暁が、尾獣を…!?だからか…」

二人は顔を見合わせて、納得せざる得ない事実に唇を噛んだ。
サスケが暁、という情報は既に漏れている。暁の装束を着ているところを目撃されているからだろう。


悪い奴等ではないのは確かだが、この二人はサスケへの復讐を目論んでいる。
誤魔化すことには成功したものの、嫌な予感は無くならなかった。特にナルトやサクラのことを思うと、コイツらを野放しにしておくのは危なすぎる。

「…復讐なんて、やめた方がいい」

我ながら、生臭いことを言っている。
しかし、この二人の考えを変えさせる術など無いのだから、自分の思う通りに言うしかなかった。

「なんだよ、文句でもあるのか?」
「いや…個人的な意見だ。俺は好かない」
「悪いけど、抜け忍うちはサスケの抹殺許可は火影から下りてる。オレ達はサスケに復讐するからな」
「え…!?」

抹殺許可。その単語に、ナナは目を見開いて驚愕した。何故、今更になってそんなことを。
他国にまで影響を及ぼしてしまったからか、暁の一員となってしまったからか。
それにしても、火影がそんな許可下ろすなんて考え難い。

「カルイ、他あたろう」
「あ!その前に、名前、あんたの名前教えろ!」
「え、あ…五色ナナ」

カルイは手をぶんぶんと振りながら、オモイはこちらを睨み付けながら、ナナに背を向けて行ってしまった。

呼び止める為の言葉が見当たらない。どんどん離れていく背中に、ナナは何度か手を彷徨わせることしか出来なかった。





再び静かな木々の音しか聞こえなくなる。
止めることが出来なかったとはいえ、もう少し足止めするべきだったかとナナは後悔していた。
あの二人がもしナルトやサクラと接触したら、ただでは済まない気がする。
二人のサスケへの思いは、ただ“友情”で表せるものではない。


「…くそ」

ぐしゃっと髪を掴んで、ナナはベンチに腰かけた。
途端に疲れがどっと戻ってくる。

サスケは、水月は香燐は重吾は、あまりにも大きなものに手を出してしまった。

「俺は…」

暁は憎い。一度でもカカシを殺めた暁は憎くて仕方ないのに、彼等の無事を祈っている。
いつか、カカシを殺めるかもしれない彼等の無事を。

関わってしまった人間の死は、もう嫌だった。



「あ!こんなとこに居やがった!」
「…?」

上から聞こえてきた声に、思わずぱっと顔を上げる。
本当に上から来たのか、とんっとナナの前に降りてきたのは赤丸に跨るキバだった。

「おいナナ、お前まだ聞いてねーんだろ?」
「何を」
「綱手様が火影を解任されたって話だよ!」
「はぁ?」

キバは相当焦っているのか、いつも以上に早口に話した。

綱手はペインによる木ノ葉潰しからずっと目を覚ましていない。いつまでも火影不在の状態でいることも出来ず、次の火影を立てることとなった。
新たな火影の名はダンゾウ。その男が雲隠れの要請、「サスケの始末」を許可してしまったのだという。

「そのダンゾウってのが…オレはよく知んねーんだけど、裏の人間でヤバい奴らしい」
「…そんな、こんな時期に」
「さっきナルト達にも会って話したんだけどよ、カカシ先生もダンゾウの名前を聞いて嫌な予感がするって言ってたぜ」

いつも明るい印象の強いキバが、声を押さえて真面目な表情で話す。
そうなってしまうのも当然だろう。火影が信じられなくなる、なんて状況は今の木ノ葉には痛すぎる。

「そうだ、ナルト…ナルト達はどこに?」
「えっと…向こう、こっからそう遠くないとこにいたけど…乗せてやろーか?」
「いや、いい。ありがとう、キバ」
「お、おお!」

ナナは疲れていたことも忘れて、すぐさまキバの指さした方へと走り出していた。

赤丸の背を借りなかったのは、キバを巻き込みたくなかったからだ。
少なくとも、ナナよりは昔からサスケを知っていて、ナルトの友人であるのだ。余計な心配はかけたくなかった。




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