NARUTO

□特別な修業
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木ノ葉病院の奥。実力を持っているのだろう医療忍者に連れられて、術式が既に用意してある部屋に入った。
ナナの体は術式の真ん中で寝かされている。

「どこか体に違和感は?」
「今は何も…」
「暫く楽にしてて下さいね」

脱がされた上半身を確認するように何度も触られる。大蛇丸に何かされた、それだけの情報でここまで動く木ノ葉。いかに大蛇丸が危険な存在かわかる。

異常が無ければいいが…そう思った矢先、ナナの体がどくんと熱くなった。喉の奥から乾いていくような感覚。

「ッは…」
「どうしましたか!?」

胸を押さえて苦しそうに息をするナナにシズネが駆け寄る。念のために体を確認するが、呪印は無い。しかし、ナナが大蛇丸に何かされたというのは間違いなかった。


・・・


「結果が出たら連絡します」

申し訳程度に頭を下げられて、ナナは病室を後にする。結局すぐに結果は出なかった。何が怖いかって、体に何が起こるかわからないことが一番怖いのだというのに。

「どうしろってんだ」

ため息しか出ない。額を押さえて、大きく息を吐き出してから前を向いた。

「え…」
「よ、お疲れさん」

まさか、と瞬きを繰り返す。しかし間違いなく、すっと手を軽く上げて壁に背中を預けて立っているのはカカシだ。
驚いたのもそうだが何故だか安心して、ナナはカカシに駆け寄った。

「なんで、体は…?」
「もう大丈夫だよ。それより、ナナが心配だったからね」
「…馬鹿」

言葉と裏腹に、嬉しさから表情が緩む。カカシはナナの胸に置かれた手を掴んで引き寄せた。

「おい、人目が…」
「ナナが可愛い顔してるから悪い」
「…なんだよ、可愛いって」
「ま、冗談は置いといて。ナナにも話さなきゃいけないことがあるんだ」

少し真剣な顔。掴まれた手に意識がいってしまうのを抑えながら、ナナはカカシの顔を見つめ返した。

「俺、にも…?」
「ん、ナルト達には一度に集めて話したからね」
「ふーん…」

皆に話すこと、ということはカカシ班に関する話なのだろうか。少し緊張して、無意識にナナは呼吸を抑えた。


「けど…その前にイチャイチャしたいかな」
「おい!」

ナナは頬に伸びてきたカカシの手を振り払って、先を歩き始めた。緊張した分恥ずかしくて、どかどかと大股で歩くナナ。その背中をカカシは目を細めて見つめた。
もう目を離せない。綺麗で、強くて、脆い。守りたい、強く思っていた。


・・・


病院から出て歩きながら、ナナはカカシの言葉を待った。恐らく、本当に大事な話をされる。カカシの様子を見ればわかることだった。

「さて、と…実はもうナルト達には話したことなんだけどね」
「はい」
「これからオレはナルトの修業につく」

思ったよりも普通だった内容にきょとんとして、それからナナははっとした。つまり、またカカシと離れるということだ。

「今回の修業でナルトは、オレを超えるかもしれない」
「…そう」
「時間がないから、ナルトにしか出来ない方法でやるんだけど…」
「…」
「…はぁ。話はちゃんと最後まで聞いてくれる?」

俯いてしまったナナの顔を覗き込めば、ナナはびくっと肩を震わせて顔を上げた。
眉が下がって不安そうにしているナナを抱きしめたくて、カカシは少し視線を逸らす。

「き…聞いてるよ、何?」
「ん、それで…今回のナルトの修業にも性質変化が関わってくるからナナも来てくれると…」

ちら、とナナを見ると目が見開かれていて。その分かりやすい表情が面白くて、カカシはふっと笑った。

「…っていうのは口実で、オレがナナと離れたくないだけなんだけど」
「っ、…」

唇を噛んで、何も言わない。違う、何も言葉が出てこなかった。素直に嬉しくて、でもその嬉しいという気持ちをどう表現していいのかわからない。
ナナはカカシの腕をぎゅっと掴んだ。

「俺…迷惑じゃねぇか?」
「迷惑なわけないでしょ」
「…」

カカシはナナの頭を優しく撫でた。良かった、そこまで体に異常が出ているわけでもないようだ。
それでも、やはり心配であることに変わりがないから、どうしても自分の視界に入れておきたかった。
勿論、愛しくて離れたくないというのも本当で。

「来てくれる?」
「ん」

小さな返事で、首が縦に大きく振られた。

「ナナ…」
「え、うわ、おい!」

我慢出来ずにカカシはナナを抱きしめて、ナナはその腕の中で暴れた。

「ここ、外だって!」
「外じゃ、先生が教え子を抱きしめることも許されないの?」
「そ、いう風に、見えないだろ…!」

腰に回った腕を解こうとしても、力強い腕が放そうとしてくれない。先生と教え子の普通の関係がどんなものだったか、もう忘れてしまった。頭を撫でるのは普通で、抱きしめるのは異常なのか。


「…お前ら、何してんだ?」
「う、わ!」

突然聞こえてきた声にナナはカカシを突き飛ばして、カカシは顔の向きを変えた。

「アスマか。邪魔すんなよ」
「おっと、邪魔だったか」
「あんたら…!」

何も知らないアスマにとっては冗談にしか聞こえていないものが、ナナにとっては全く違って聞こえるもので。頬が赤くなったまま、ナナはカカシの後ろに下がった。

「カカシ、ナルトの修業に出るんだろ?」
「あぁ、丁度ナナともその話をしてたんだ」
「…その話をしていて、どうしたらあぁいう状態になるんだ?」
「おい、カカシ」

余計なこと言うんじゃねーぞ、とでも言うように、ナナはカカシを睨み付けた。 それを知らないアスマはナナの様子を不思議そうに見ている。アスマと目が合った途端に、ナナはびくっと肩を震わせてもう一歩下がった。

「まぁなんだ、何かあったらオレも協力するぞ」
「ん、助かるよ」

話していた二人の会話が止んで、視線がナナに集まった。

「…何だよ」
「いや、なんで後ろに隠れたのかと」
「もしかしてオレ、嫌われてんのか?」

はは、と笑いながらアスマが言うその言葉に、ナナの頬がぴくりと動く。自分でそれがわかってしまい、ナナは首を大きく横に振った。

「違う!嫌いとかではない!」
「…オレ、何かしたか…?」
「そもそも、ナナとアスマってそんなに関わったことないでしょ」
「そうだよな?」
「本当に…そういうんじゃない、ですから…」

言葉と行動が一致しない。ナナはなるべくアスマを見ないように視線を泳がせている。カカシが少しナナの前からずれると、ナナは困ったように眉を下げた。

「ナナ?アスマが怖いのか?」
「っ、ちが…」
「オレが怖い?オレの顔か?」
「う…」

驚いてアスマがナナの方に踏み出すと、案の定ナナは無意識に体を反らした。

「…落ち込むぞ」
「落ち込んでいいぞ」
「いや、あんたが怖いんじゃなくてっ…あんたみたいのが…」

もごもごと言いづらそうに小さい声で漏らした内容に、カカシははっとしてアスマを見た。アスマはカカシより体が大きくて、どちらかというとゴツいタイプの男性だ。

「あぁ…そういうこと」
「何だ?どういうことなんだ、カカシ」
「単にアスマがナナにとって苦手なタイプだったってことだ」
「ちょっと、それは語弊があるだろ…」
「でもそういうことでしょ?」
「…もうちょっと気の利いたこと言えねぇのかよ」

否定しないナナを見て、アスマはがくんと頭を下げた。
実際アスマは一切悪くない。ただ、ナナが昔されたことが、アスマのようなガタイの良い大きな男に対する恐怖を焼き付けてしまっただけ。

「なんか、悪かったな…?」
「あ、謝らないでくれ…あんたは悪くないんだ、本当に」
「そうか?ならいいんだが…」
「ほら、ナナが嫌がるからどっか行ってくれ」
「カカシ!」

カカシが手をひらひらとさせる。それを見てナナがカカシに蹴りを入れる。その光景を見て、アスマはふっと笑った。

「仲が良いんだな」

他意などないアスマの言葉に、またナナは顔を赤くしてカカシの足を蹴り上げた。

「仲良くない!」
「はは、じゃあなカカシ、ナナ」

ぱっと掌をこちらに向けると、アスマは二人に背中を向けた。
ふう、と息を吐いてからカカシの視線がアスマからナナに映る。そのナナは申し訳なさそうに頭を下げていた。

「ナナ、ナナも悪くなんかないよ」
「…いや、俺が」
「ナナ」
「…」

カカシに名前を呼ばれると、何故だか全てがどうでもよくなってしまう。ナナは自分の髪の毛をぐしゃっと掴んで歯を噛み締めた。
そんなんじゃ駄目だ。甘えちゃいけないとわかっているのに。

「優しくすんな」
「何?」
「俺に、優しくしなくていい」

カカシがきょと、と目を丸くしている間に、ナナは先を歩き始めた。今回の修業で強くなるのがナルトだけじゃ駄目なんだ。

「俺も、もっと…」

もっともっと強くならなきゃいけない。カカシに、余計な心配をかけないように。



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