黒子のバスケ

□欠損したクリスマス(黒子)
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(注)かなり短い、切ない話




朝から緑間にラッキーアイテムだと言って可愛らしいキャンディをもらった。
午前の休み時間にはメリークリスマス!と女の子を引き連れた黄瀬が顔を出して。格好良いシルバーのブレスレットを真司の手に置いて行った。
昼休みには珍しく紫原がお菓子を届けに来て、その隣に立っていた赤司は頭を撫でてくれた。

そんな、少し特別な一日の終わり。
イルミネーションが色を灯し始めた街並みを、真司は一人歩いていた。



「…」

楽しくて、嬉しかったからこそ、ぽっかりと空いたどこかが塞がってくれない。
浮足立ったカップルがすれ違う、そんな普段なら目につく様子も今は背景として通り過ぎていく。

「去年は…どうしてたっけ…」

寒いと嘆きながら、シェイクを飲んでいた彼。
相棒に一番喜ぶ物をやるんだ、と買って来たのは青峰だった。
無表情で口に含んで、有難うございますと微笑んだのは。

「…テツ君」

歩きなれた通学路。
帰りに寄ったマジバーガーが目の前にある。

ふと、通り過ぎそうになった店内の窓際の席に、薄い水色の髪が見えた。


「…っ、」

招き入れる自動ドアに引き寄せられるように駆けこんで、外から見えた席を探して店内を見渡した。
部活を辞めた黒子、それ以来一度も姿を見ていない。

どうしても話がしたかった。
辞めてしまったその理由、姿を見せてくれなくなったそのワケ。
きっと、彼なりのヘルプに真司は気付けなかったのだ。それが、申し訳なくて、謝りたくて。

「気のせい…か…」

いつも座っていた場所に、黒子の姿はない。
学校の教室にも、図書室にも、体育館にも、どこにも見当たらない。

「…いくらでも買ってあげるよ」

誰もいないテーブルに手を乗せて、痛い程に握り締める。

「Lサイズだっていいよ、喜んでくれるなら…なんだって、」

皆でまた過ごしたい、だなんて贅沢な事は言わない。
去年のクリスマスのように、皆で集まりたいだなんて思わない。
ただ、笑ってくれるだけでいいのに。

「どこいっちゃったんだよぉ…」

淡い冬の寒さを感じる度に、あの色を思い出してしまう。
寒そうに震える細い肩、雪景色に溶け込むような薄いその影。

真司は肩にかけた鞄から、一つの袋を取り出した。
黒子の為に用意したクッキー。紫原から死守したものの、誰の口にも入らずに終わるらしい。
柄にもなく丁寧にラッピングしたそれを放り投げると、真司は足早に店を出て行った。

「何期待してんだよ…馬鹿みたいだ…っ」

今まで会えなかったのに、今日会えるかもなんて。
濡れた頬を冷たい風が撫でる。吐き出す息は白く、真司は自分の腕を抱いて帰路を走り抜けた。










「…美味しいです」

ぽつりと賑やかな店内にかき消された声は、誰の耳にも届いていなかった。



(終)

2013/12/25

帝光中、三年目の冬。
サイト主生存報告も兼ねて、かなり短いですが書きました。

長編は二号登場の話を執筆中。
関係ない短編を二種類くらい電車とかで適当に書き進めてます。
いつ更新できるか分かりませんが、一ヶ月以上更新しないという事がないようにするつもりです。
お待たせして申し訳ないです<(_ _)>

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