Junk置き場

□エンヴィー
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夢主設定強め。人間→ホムンクルスな男主





腕を拘束する金属が重い。
それから、昨夜絞められた首がまだ少し痛む。

「もうちょっと…優しくしてくれてもいいじゃん…」

ぽつりと呟いた声は闇の中に消えた。

こんな生活が始まってどれほど経ったのだろう。
暗い部屋には何もなく、最初は息苦しくて仕方なかったのに。

「俺も、何慣れちゃってんのかな…」

愛か、絶望か。恐らくどっちもだ。
自分から選んだ道とはいえ、こんなことになるなんて。でも、それでも惚れてしまったから、今更文句の一つも言いようがないのだ。



何年前かもわからない、イシュヴァールの内乱。国家錬金術師だった北条は有無言わず参加させられた。
そこでちょっと暴走したんだ。なんだかもう何もかも面倒くさくなって、敵も味方も巻き込んでなぎ倒して。


『へぇ、なかなか面白いじゃん、君』
『っ、誰だ!?』

多くの血が流れたそこに立ち尽くした北条。
その背後に現れた男は、軍の人間ともイシュヴァール人とも違う変な格好をしていた。

『イイこと考えたよ。ねぇ、ボク達のところに来ない?』

これだけの人を殺したんだ、どうせ人の世界に戻っても普通に生きることなんて出来るわけがない。
その言葉は怪しくて、でもとても甘かった。

『きっと人間は、戦わされただけの君を罵倒するよ』
『…』
『でもこれだけ味方をやっちゃねぇ…殺されちゃうかも』

その時、北条は18歳だった。
散々人を殺めておきながら…生にしがみついたのは、若さ故か。

『…お前について行ったら、生きれるのか…?』
『勿論。君が受け入れるならだけど』

深く考えることなく北条は頷いていた。

それからの事はあっという間すぎてあまり記憶に残っていない。
暗い地下に導かれて、体をいじられて。
北条は人造人間の仲間入りを果たしていた。


・・・


「何考えてんの?」

急に声をかけられて、北条ははっと顔を上げた。
重い扉を開けて入ってきたのはエンヴィーだ。
北条をこの世界に導いた張本人で、北条を縛り付ける男。

「別に。エンヴィーがいないから、暇だっただけ」
「そうだろうね。北条にはボクしかいないんだから」

このエンヴィー、その名の通り“嫉妬”の感情だけ他に比べて秀で過ぎている。
だから、北条にはほとんど自由がなかった。
なんて、愛しているわけでもないのだろうに。

「早く触って欲しいんだろ?」
「わかってるなら…早く…」

それが分かっているのに、北条は鎖が纏わりついている腕を少しエンヴィーの方へと動かした。
カシャンと錆びついた音がなって、腕が少し絞まる。

「しょーがないなぁ」

満更でもない顔をしながら、エンヴィーは北条の腕を掴んで荒々しく口付けをした。
薄らと目を開ければ、紫色の瞳と視線が合う。自分の顔は見えないけれど、きっと同じ目が自分にも付いているのだろう。

「あっ…!」
「言っとくけど、すぐに意識飛ばさないでよね」
「は、それはお前次第…ッ」

エンヴィーの手がきつく北条の下半身を擦りあげる。
もう何度も繰り返してきた行為。
だけれど、どうやら今日は機嫌が良いらしい。

「ッは…ぁ」
「ほら、もっと声出して」
「ん、…中も、早く…」

北条は自ら足を開いて懇願した。
こんなこと、最初は有り得ないと思っていたのに。気付けばもっともっとと求める自分がいる。

「じゃ、もういれるよ」
「んっ!待て、まだ、解してな…っ!」

ただ問題は、この男が優しくないということだ。
突然足が持ち上げられて、自然と体が後ろにひっくり返る。
ひやりとした壁に背中が当たって、全身に鳥肌がたった。

「痛っ、ばか…!」
「早くって言ったの北条じゃん」
「まず指で、って、あ、動くな!」

死なない体、傷の癒える体。
何度ぐちゃぐちゃにされても、開かれた場所は元に戻ってしまう。

「いっ…ぁ、あ」
「ほら、すぐ良くなるだろ?」
「っは、あ、また…無駄に石が、ん!」
「あげるから、安心しなよ」

体がエンヴィーに叩きつけられて、奥まで刺激が駆け抜ける。
もはや、痛みも快楽同然で。痛いのか気持ち良いのかわからなかった。

「あ、あっ、でそ…」
「まだ駄目」

きゅっと先を強く握られて、そこまで来ていた快感がせき止められる。
北条はそのどうしようもない感覚をどうにかしたくて、自分の膝に歯を立てた。
揺らされて、がちがちと震える。

「またそうやって、自分で傷つける癖に…」
「っく…、も、…ッ」

目にたまった涙が頬をつたった時、エンヴィーの動きがピタリと止まった。
エンヴィーの手は北条を縛る鎖に伸ばされている。
視界の外で何をしたのか、ガシャンと鎖が砕けて床に落ちていた。

「北条、ボクに抱き着いていいよ」
「はァ…っ、む、かつく…」

むかつく、そう言いながらも、北条はエンヴィーに近づいて首に手を回した。
それから、自分でそこに腰を下ろす。

「んっ…」
「北条、えっろ」
「誰が、そうさせたんだよ」
「ボクに決まってんじゃん」
「あ!」

腰を掴まれて、そこに押し付けるように下ろされる。
北条は無意識にエンヴィーの首に回した腕に力を入れた。
体と体が密着する。そこに熱はない。

「アハハ…北条ってホント…可愛いね」
「だ、まれ…」
「ふは、そーやって照れちゃうとこもかーわいい」

にた、と笑って打ち付ける速度を上げる。
そんな体によって与えられる快楽なんて必要がない程、北条の体はエンヴィーに縛られていた。
低くて少し掠れた声。女性のようなしなやかさを持つ体。
全てが愛しくて、憎たらしい。

「ん、奥…、あっつ…」
「っは、気持ちい…」
「え、ンヴィ、っあ…!」

声が少し反響する部屋で、自分のこんな声を聞くのも最初は嫌で嫌で仕方なかったのに。吐息混じりになるエンヴィーの声が聞こえるから、それも全然気にならなくなっていた。

「はぁ…なか、出すよ」
「ん…出して…っ」

しがみ付いたまま、繋がったまま、奥まで熱が届く。
その瞬間だけ、冷え切った体が満たされるようで。
北条は少しのけ反ってからエンヴィーの体に倒れ込んだ。


「あー…北条の体、ホント気持ちい…」
「はぁっ、ん…なんか、それ、俺の体だけいいみたい、なんだけど」
「は?当たり前だろ。体が良くなかったら捨ててるよ」
「…そういうこと、言う」

エンヴィーの気持ちは全然見えない。
そう、今日は機嫌が良かったから普通に出来たけど、昨日なんかは酷かった。
死なないから、治るから、傷つけて傷つけられて噛み千切られて。

でも、離れられない。

北条はエンヴィーに抱き着いたまま、その肩に頭を預けて目を閉じた。

「北条」
「…暫くこのままで、いさせろよ」
「別にいいけど、また勃っちゃった」
「…」

エンヴィーは気まぐれだ。だから、きっとこんな風に相手をしてくれなくなる日も来るだろう。
わかっているからこそ、北条は自分から腰を揺らした。
いつか、自分から逃げ出すことが出来るようになるまではこのままで。



(終)

2012/06/06
本当はもっとシリーズとして書きたいストーリー第一弾。
主人公の設定ばかり膨らんで、鋼錬の難しい世界に上手いこと入っていけないために執筆不可。

嘗て表に置いていましたが恥ずかしくなって封印したものです。


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