Junk置き場

□煌と拓人
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※煌と共にいる吸血鬼の少年




拓人が吸血鬼となって一ヶ月程経った。
あれからというもの、拓人と煌は毎晩共に過ごしている。
一つの部屋で二人が何をしているかなど、聞き耳立てるまでも無い。

北条はそれをいつも複雑な思いで見て見ぬふりをしていた。

北条は拓人よりも前からずっと煌のことを愛していたし、煌と共にいた時間も長い。
それなのに急に現れた人間であった男にこうも簡単に取られるなんて。

「…ぐれる。ぐれてやる」

広い屋敷の中、あまり使われていない小さな部屋の中で北条は膝を抱えてそこに頭を埋めた。
この屋敷の中で、煌から逃れるなど無理なことだと分かってはいる。
しかし、これは北条なりの反抗のつもりだった。

「煌…煌なら、来てくれるよね…?」

そう呟くのは、それでも彼を信じているから。そして、心から愛し求めているからだった。



・・・



どれくらいそうしていたかわからない。時間の感覚なんてとうの昔に置いて来た。

「煌…俺のこと、もういらない…?」

確かに、愛する相手なんて一人いれば十分だろう。
ずっと煌が拓人を思っていた事を分かっていて傍にいたのも事実。

だとしたら、もう北条に生きる目的など無い。
このまま血を飲むこともなく、死んでしまえればいいのに。

「煌のばか…」

それすら許されない不死身の命。
北条はすんっと鼻を吸って、ぽろりと涙を床に落とした。



「誰が、馬鹿だって?」

急に低い声が耳元を掠めた。
全身に走るぞわっとした感覚に顔を上げると、煌の顔がそこにある。

「…!?こ、煌…?」
「ずっと、ここにいたのか」

北条の体は煌に支配されている。煌の声一つでも体が痺れてくるほどに。
今までの苛立ちや悲しみは何だったのか、煌の声と姿と、とにかくここにいるという事実が北条を満たしていた。

「何だよ今更…」
「北条は、一人になりたい年頃なのかな…?」
「ちが、!?」

優しい笑みを浮かべた煌が北条の体をひょいと抱き上げる。
抵抗する間なく足を地から離した北条は、そのままそこにあったソファーに運ばれていた。
腰掛けた煌の足の上に乗った状態で、/ぎゅっと抱きしめられれば、もう逃げる術などない。逃げれるはずもないが。

「何が…お望みかな」
「し、知らないよ…煌なんてキライだ」
「それは困るな…」

煌は北条の髪の毛を指先でいじりながら耳元に顔を近づけた。
甘い、吐息混じりに声が頭の奥にまで響いてくる。

「北条…」
「っ…煌は、ズルいよ…拓人にだって同じことしてるくせに」
「同じこと…とは」
「俺にも、気持ちいいことしてよ…!」

北条は自分から煌の唇に吸いついていた。
一瞬驚きに目を開いた煌は、むしろ北条の頭を抱き寄せもっと深く絡めてくる。
久々の感触。本当はいつだって欲しかったもの。

「ぁっ、煌…」

煌は北条のズボンと下着を脱がせると、既に大きくなった北条のペニスを握り込んだ。
煌の指は丁寧に、北条の感じる部分を刺激してくる。
煌は北条の全てを知っていた。

「う…ぁ、あ」
「可愛いな…北条は…」
「そ、やって…っ、俺のこと、おかしくする、くせに…っ」

虜にしておいて、新しい相手が出来たら放ったらかしなんて。
そう口をつきかけた文句も、あっという間に呑み込まれていた。

耳に付くやらしい水音に体が熱くなる。
更に先端をぎゅっと押され、北条は小刻みに震える体を抑えられなくなった。

「ぁ…っん、…は、あッ」
「北条、拓人に嫉妬したのだろう…?」
「し、したよっ、…ん、だって…最近、拓人ばかりっ」
「拓人は…血を慣らす必要があったからね…」

人間だった拓人に血を飲ませる。それは確かに煌にしか出来ない役目なのだろうが。
それにしたって二人の関係はその程度ではない。

なんて思うことが欲張りだということは自覚している。
それでも、それほど彼を愛しているから。

「ぁ、っ!」

びくっと震えて北条の体がのけ反る。気持ちが良い。煌に触れられるなら何でも。
ぼうっとした頭で煌に抱き着いた北条は、もうイく寸前だった。



「煌…?ここにいるのか?」

しかし突然聞こえて来た声に、北条はさっと血の気が引くのを感じた。
かちゃっと扉が開いて、足音が近付いてくる。確認するまでも無い、拓人が来たのだ。


「ん、…煌、待って…っ」

それでも尚、煌は手の動きを止めることはしなかった。
拓人に見せつけてやろうとか、そんなこと考える余裕などない。単純に恥ずかしさが勝っている。

「あっ、煌…っ、駄目、だって!」
「北条…?」
「っ!!」

ばっと目を声の方に向ければ、拓人が茫然と煌に跨った状態で喘いでいる北条を見ている。

見ないでくれ、というか空気読んで出て行ってくれと願う。
しかし、拓人は何を思ったのか、近づいてくると北条の上着を脱がせ始めていた。

「え!?な、何して…!」
「煌ばかりズルいよ。俺だって北条を抱きたいのに」
「は…!?」

意味が分からない。なんだこの状況は。
されるがままに丸裸にされた北条の背中に拓人の舌が這う。
手は背中から前に回されて北条の乳首を弄っていた。

「や、やめ…!っなんで、拓人まで…!」
「なんでって…北条、可愛いから」
「こ、煌もっ…指、やめ…っ」
「…可愛いな、北条は…」

俺が可愛くないみたいじゃないか、と言い返す拓人はいつも見ている通りの煌を愛している拓人に見えるのに、その手は何故か北条の体を触っている。

拓人の片手はするすると下に降りてきて、煌が触っている北条のペニスに重なった。

「やっ、そこ…もう、やめっ…っく、ぁ…」
「北条…イっていいよ?」
「た、拓…っ、何、言って…っん!」

煌よりも細くしなやかな指。二人の手が違う触り方をしてきて、下半身の感覚がだんだんと麻痺してくる。

大きな刺激の波に身を任せ、北条はようやく二人の手の中に精液を吐き出した。

これで終われば、まだ何かの間違いだったと思えたかもしれない。
しかし、二人の会話はどうもおかしかった。




「煌、俺が挿れてもいいよな?」
「…」
「どうせ挿れたことあるんだろ?俺に譲ってよ」
「…仕方ないな」

するすると拓人の手が胸から腰に移動する。
それと同時に煌が北条の顔を自分に引き寄せて、自然と拓人の方にお尻を突き出す体勢になっていた。

「ちょ…と、二人とも、何して…」
「北条、挿れるよ」
「待っ、ッあ、あ…!」

たったの一声で、北条の中に指よりも熱いものが入ってくる。
これは、考えるまでもない拓人のものだ。一方煌の手は相変わらず北条のペニスに強い刺激を与えて来て。

「やっ、た、拓人…!?」
「いい加減分かってよ、北条。俺は君の事好きなんだって」
「い、み…分かんな、あっ」

激しく襲ってくる快楽に、北条は煌の首にしがみ付いた。
こんな意味のわからない状況の中でも、快楽には耐えられない。それがたとえ、拓人からのものだとしても。

「たっ…拓人、ぁあ…っんあッ」
「はぁ…北条の中、気持ちいいよ…」
「北条、こっちを見るんだ…」
「ぇ、あ…っ」

煌の手が北条の頬をぐいと引き寄せ、唇を奪う。
熱い息が混ざり合い、上手く呼吸が出来ない。苦しいのに、気持ち良くて。

「ん、ふ…、煌っ、もう離し、ぁっ」
「北条、俺も…、もう出すよ…」
「北条…愛しているよ」

二人の声が耳の奥を刺激する。低く響く声と、甘く誘惑する声。
北条は流されるまま酔い痴れ、快楽の底に堕ちて行った。




・・・




「煌、もしかして今までも北条のこと陰で抱いてたのか?」
「…初めてではないが」
「ふーん…」

意識が遠くなっている中、薄らと拓人と煌の声が聞こえる。
結局、何がどうなって、こうなったんだっけ。
ぼんやりと意識を巡らせ、それから北条はばっと起き上った。

「そ、そうだよっ!拓人は煌のこと好きなんだろ!?」

はっと持つべき疑問を思い出して、拓人の方に顔を向ける。
突然起き上った北条に驚いた表情がこちらに二つ向けられる。

「起きたんだ。良かった、無理させちゃってごめん」
「ごめん、じゃないよ…分かるように説明してよ…!」

もはや怒りだとか言葉で説明できる感情ではない。
体を震わせる北条は見て、拓人はいつも煌の前で見せている顔とは少し違う顔をして笑ってみせた。

「煌のことは勿論好きだけど…俺は北条のことも愛しているよ」
「な…」
「この屋敷に来て初めて見たときから気になってたんだ」
「何、おう…?」

いつも煌に攻められて喘いでいたあの姿はなんだったのか。
などと突っ込む気も失せて、北条はソファーに腰掛ける煌の体にすり寄った。

拓人がどう思っていたって、北条が好きなのは煌だ。

「…私も、拓人と北条、二人とも愛しているよ」
「…そ、そんな…煌まで…」
「あとは北条が俺を好きになってくれれば、万事解決なんだけどな」
「……」

北条は暫く茫然として、それから考えることを辞めた。
もはや北条にどうにか出来る状況ではなくなっていたらしい。

これから長い時を生きる三人、きっと北条の感覚も麻痺していくのだろう。
北条は複雑な思いのまま、それもいいのかもなんて既に絆され始めていた。



(終)



2013/07/09若干改訂。


嘗て表に置いていましたが、恥ずかしくなって封印したものです。

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