FAIRY TAIL

□Sランク
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エルザが評議員に呼ばれて裁判にかけられた。原因は先日怒ったララバイ撃退の時の器物損壊にある。
今まで散々やらかしてきたのに、何故今になって。フェアリーテイルの皆は不満を漏らしていた。
特にナツは暴れる勢いで。


「オレをここから出せー!」
「出したら助けに行く!ってうるさいでしょ?」

駄目よ、とミラが言っている相手は、コップを蓋にして閉じ込められているトカゲの姿をしたナツ。

「ナツ、そっちの方が可愛くていいんじゃねぇ?」

ロアはコップを突きながら言った。

「なぁ、俺、ちゃんと捕まえとくから、出していい?」

ロアの言葉は単純な興味からだった。しかし、そう言いながらコップを揺らしたロアに対し、焦ったような顔をしたのは、コップの中にいるトカゲの方。
出せ出せと喚いていたのに、どういう心境の変化か。…まさか。
なんとなく感づいてマカロフの方を見ると、目があったマカロフは口元に笑みを浮かべて小さく頷いた。

「ふっ…お前可愛いなぁ」

ロアはコップをどかして、尻尾を掴み持ち上げたトカゲの脇あたりに指を当てる。それを上下に動かして擦ると、トカゲはくすぐったさにもがいて変身を解いた。

「やめろ、ロア…!」

それはナツではなく、マカオだった。

「え!?マカオ!?」
「じゃあ…本物のナツは…」

それを見て驚いたギルドメンバーはそれぞれ皆が疑問を口にする。
ナツに借りがあったマカオは、自分からトカゲに化けて、ナツを見逃していたのだ。

「ってことは…ナツは暴れてるんだろうな…」


その頃、本当にナツはエルザの裁判中に暴れまくっていた。


・・・


エルザが裁判にかけられるというのは、所謂儀式というもので、形だけの逮捕だった。評議員は、魔法界の秩序を守らねばならない。つまり、エルザは罪になるものの、罰はない、ということだった。
想像通り、ナツはエルザのために暴れまくって、ナツもエルザも本当に捕えられることになってしまった。




数日後。

「シャバの空気はうめぇ!」

帰ってきたナツは一人で楽しそうに暴れ回っていた。

「おい、心配かけといてそれはないだろ」
「ロア、心配してくれたのか!」
「…前言撤回。ずっと捕まってれば良かったんじゃないか?」

ナツの額を小突くと、それさえも嬉しそうに笑った。



急に、眠気がフェアリーテイルを襲った。この感覚には覚えがある。
皆がばたばたと倒れる中、ロアは光を目に集めると、眠気を遮り、必死で耐えていた。

「…ミストガン」

フェアリーテイル最強の魔導士の一人であるミストガンだ。ミストガンは顏を見られたくないとかで、いつもギルドに入ってくるときは眠りの魔法をかけて入ってくる。

「ミストガン…久しぶり」
「ロアか…相変わらず寝ないな、お前は」
「だって…会いたいじゃん」

眠い。眠いけどそれに耐えてでもミストガンには会いたかった。
精神面に傷を持っていた頃のロアを強くしようと修業をつけてくれたのはミストガンだった。今でもその恩は忘れていない。

「行ってくる」
「…行ってらっしゃい」

ミストガンは仕事の紙を壁から剥がすと、すぐに踵を返してギルドを出て行った。
同時に眠りの魔法が解ける。眠っていた全員がぱち、ぱちと目を開けて目をこすった。

「この感じ…ミストガンか」
「あいつ相変わらずスゲェ眠りの魔法だな!」

なんとなく優越感に浸るロアの耳に、ミストガンって?というルーシィの疑問の声が聞こえてきた。
新入りであるルーシィはミストガンを知らない。ルーシィが来てからミストガンがギルドに来るのは初めてだった。

「ミストガンは、フェアリーテイル最強の男候補の一人だよ」
「あ、ロア!最強の…候補って?」
「ん、と…つまり最強は他にもいるんだけど」

「なんだ?オレの噂か、ロア」

ロアがルーシィと話していた背後、二階から声が聞こえて振り返る。
そこには、最強の候補もう一人の男。

「…ラクサス」

ラクサスの登場に、ギルド内がざわついた。ラクサスが普段ほとんどギルドにいないからだ。
珍しい、いたのか、などと皆が声をかけている。
ミストガンの魔法で眠り続けていたナツもぱち、とようやく目を開けた。

「ラクサス!オレと勝負しろ!」
「お前ごときじゃオレには勝てねぇよ」
「なんだと?降りて来い!」
「お前が上ってこいよ」

勝手に二人の間で火花が散っている。正しく言えば勝手に散らしているのはナツだけだが。
ラクサスはSランクでないナツが二階に上がれないことをわかっていて挑発していた。

「おい、ラクサス。あまり調子にのるなよ」

ロアはラクサスが好きではなかった。マカロフの孫でありながら、フェアリーテイルには似つかわしくないその性格。

「あまり調子にのっていると…痛い目見るぞ」
「痛い目?なんだそれは。ロアが見させてくれんのか?」
「さぁね」

上から見下ろされているだけでも腹が立つ。
ラクサスは自分が最強だと言って笑いながら奥に消えて行った。



「ねぇ、二階って何かあるんですか?」

ルーシィがミラに問いかけている。それを見ていたロアとミラの目があってちょいちょいと
手招きされた。

「ロアが二階にいるのは知っているでしょ?ロアも含めて、二階に行けるのはSランク魔導士だけなの」
「Sランク!?」

驚いたルーシィの顔はロアに向けられている。

「…何?俺がSランクじゃ不満?」
「いや…なんていうか雰囲気的に」

そのSランクのメンバーは、マカロフと、エルザ、ラクサス、ミストガン、ロア、そしてもう一人今はここにいないギルダーツ。確かに雰囲気を言ってしまえばロアだけ違うのは否めない。

「でも、ミラだって昔はそうだったんだぜ?」
「え!?」
「昔の話よ」

ルーシィの中でSランクのイメージがよくわからなくなってきた頃、ロアにナツが後ろから抱き着いた。突然の出来事にロアが後ろによろける。

「な、なんだ?」
「ロア、オレ絶対ぇ追いつくからな!」
「悔しくなったんだ?」
「ラクサスはロアの部屋に行けるのに、オレは行けねぇなんて、許せねぇ!」

え、そこなんだ。と誰もが心の中で突っ込みを入れた。
しかしロアはそのナツの思いが嬉しくて頬が緩んでいた。




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