拍手・駄文U
□real style
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高級ホテルのラウンジに連れて来られたカガリは、周囲を見て呆けたように立ち尽くす。ー…上流階級の洗練された者達がいっぱいで、どう見ても場違いな自分。以前のディナーバイキングの時もそうだったけど、また粗末なTシャツとデニムのジーパン姿…。あぁまた失敗した。何時までも渋い貌で突っ立っている彼女の手を優しく引き、美貌の歌姫はどうぞ遠慮なさらずお座り下さいとソファに誘導する。
『……えっ…と…』
『どうなさいましたか?……カガリさん』
『いや、何でもー……』
こういった高尚な光景には、いつもながら圧倒される。ー…ラーメン屋の方が遥かに楽だよな、と考えるの自身はなんて庶民的な人間だ。ふと一瞬脳裏に浮かんでくるのは、紳士的尚且つノーブルな藍の存在。彼なら自然に溶け込むだろうな、こんな空気の中でも……
『……カガリさん……申し訳ありませんでした……急にお呼び立てしてしまって……』
『……ぅ…ううん……いいんだ……』
先程の天真爛漫さとは真逆の淡い微笑み。ー…カガリはふるふると首を振って、ぎこちなく……
『……わ、わたしも………ラクスに話があったから……』
『……カガリさんも、ですか…?』
『………あぁ…』
晴れ渡ったスカイブルーの瞳と、光輝く黄金の瞳が混じり合う。ー…沈黙のままじっと視線を寄せ合ううちに、ラクスから笑みが消えていく。真摯な女神の視線を最初は躊躇いがちに捉えていたカガリは、やがて決心したように唇を動かした。……ラクスの話ってアスランとの事か?“破局”の言葉はあえて控え、ぼかしながら尋ねてみる。本当はこの先を聞くのが怖い。けれど悶々としたままじゃいけない、とカガリは強い眼差しを懸命に歌姫に当て、今一度ー……
『話って……アスランとの……事か?』
思い掛けずカガリから切り出されて、ラクスの美しい瞳が微妙に見開かれる。ー…しかし歌姫は直ぐに平静な表情を取り戻し、それから目許を柔らかく緩めて泰然と答えてみせた。
『……ええ、そう、わたくしとアスランのお話ですわ……』
破局の会見……驚いたでしょう?
『……カガリさん、わたくし……恋人を……アスランを振ってしまいましたわ……』
……理由、お聞きになりたいですか?わたくし、カガリさんに是非聞いて頂きたかったのです……
キラリと輝く瞳が、何故か挑戦的にも見えて……
カガリはごくりと喉を鳴らした。
正面のソファで少し前のめりになって、食い入るように見つめてくるラクス。ー…その気迫に押されてカガリが身を引いた途端、ラウンジ内から視線を感じ慌てて立ち上がった。そしてラクスのほっそりした指先を掴み込み、小声でぼそぼそと呟く。ー…ラクス、話は部屋に行ってからにしないか。泊まってるんだろ?周りの目が気になり出したカガリにくすりと微笑み、歌姫は優美に腰を上げた。
分かりましたわ、ではわたくしの部屋に参りましょうか……