アイシールド21

□不謹慎
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朝練を終えた部室の様はいつもと違った…

「優鈴先輩、どうしたんだろ?」
「優鈴先輩が休むなんて、珍しいよな」
「ムサシくんが居ないから余計心配よね…」
「ケッ、知るか」

ムサシくんが昨日から出張で休んでいるうえに、今日の朝練を優鈴ちゃんが無断欠席して、ヒル魔くんの機嫌悪かった

ガチャ

「あっ!優鈴先輩」
「おはようごさいMAX!」
「優鈴ちゃん、おはよう?」
「ケッ、遅ぇぞ糞優鈴…?」

あれ?優鈴ちゃんの様子がおかしい…
そう思っていたら、優鈴ちゃんが意気なりヒル魔くんに駆け寄って…

タッタッタッ、ギュウ

「うぅ…、よ、妖一、うぅ、げんが、うぅ、厳が居ないのうぅ、どこ?厳、どこ?」

優鈴ちゃんがまるで子供の様に泣いている姿を見て、みんな唖然としていた

「テメェ、熱があるだろ」
「厳は、げんはど、こ、ゲホゲホ」

何が起きているのか、分からない
ただ、胸が苦しかった

訳も分からないまま、栗田くんがみんなを部室から出した

「どうしちゃったんッスか、優鈴先輩!?」
「ごめんね、優鈴ちゃん熱があるみたいだから…」
「それなら、早く何とかしてあげないと!」

と、私が部室に戻ろうとしたら

「行っちゃダメー!!」
「えっ!どうして?」
「行ったら見たくないもの見ちゃうから…」
「え…?」

少し胸が騒ついた

「あのね…」

そう言うと栗田くんは、気まずそうに話はじめた

「優鈴ちゃんの両親って、優鈴ちゃんが5歳の時に亡くなってるんだ」
「「「えっ!?」」」

誰もが驚いた
そう言えば、優鈴ちゃんから家族の話を聞いた事がない

「それで、今の事と何の関係があるんッスか?」
「うん、実は高熱を出した優鈴ちゃんを車で病院に連れて行く途中で、対向車に跳ねられて亡くなったんだ…
だけど、優鈴ちゃんは高熱のせいで3日間意識がなくて起きた時には、両親はいなかったんだ…」
「そうだったんだ…」
「うん、それで熱が出るといつもあんな風にパニックになるんだ…
ああなった時は、いつもムサシが何とかしてたんだけど、今日はムサシが居ないから、余計にパニックになってるみたい…」

栗田くんの話を聞き終えた時チャイムが鳴り、みんな校舎へと向かって行った

今朝の光景と栗田くんの話が頭から離れない
緊急事態なのは分かってる
ああするしか無かったって事も分かっている
ヒル魔くんはムサシくんの代わりだって事も
けど…

胸が痛い

ち優鈴ちゃんが苦しい時に、嫉妬する私は…

不謹慎だわ


それからヒル魔から、今日は部活を無しにするというメールが来た

今も、彼の腕の中に優鈴ちゃんが居るの?
今も、彼は優しく優鈴ちゃんに触れているの?

痛い、胸がズキズキと痛む…


学校が終わり、私はすぐに部室に向かった
部活は無いと言われた、栗田くんにも止められた、けど、どうしても、ヒル魔くんに会いたい!

部室に向かうと見慣れた車が部室の横に止めてあった、まさかと思い、部室のドアを開けると、ムサシくんが優鈴ちゃんの手を握り、頭を撫でていた

「ケッ、来たのか糞マネ!」
「どうして、ムサシくんが?」
「あぁ、昨日家を出る時に優鈴の様子がおかしかったから、早めに仕事を切り上げて帰って来たんだ」
「そうなんだ…」
「悪かったな、姉崎」
「えっ?」
「ヒル魔から聞いた 優鈴はもう、連れて帰るから」

そう言って、ムサシくんは優鈴ちゃんを抱き抱えて部室を出て行った

「で、何でテメェはここに来たんだ?」
「そ、それは…」

困ってしまった
なぜと聞かれても、自分でも分からない

私が困っていると

「姉崎」

えっ!

気付いた時には、ヒル魔くんの腕の中だった

「ちょ、ちょっと」
「悪かった…」
「謝らないで、私は平気だから…」
「けど、テメェの顔はそんな風には見えねぇけど」

ヒル魔くんに私の心の内を当てられて、言葉が詰まる

「…2時間と45分だ」
「えっ?」
「糞優鈴が泣き付いて離れなかった時間だ。だから、テメェをそれ以上抱いててやる」
「えぇ!」
「ついでにそれ以上の事もしてやろうか、アネザキサン」
「!?」
「ケッケッケ、ちょうど部活も休みだしな」
「ちょ、調子に乗らないで!!」

やっぱり、私は不謹慎だわ

だって、優鈴ちゃんが熱を出してくれなかったら
ヒル魔くんはこんな事、しなかったと思うから
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