アイシールド21

□恋しくて
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「ねぇ、お父さんとお母さんはどこにいるの?」





【恋しくて】


ピッピッピ、ピッピッピ

あー、何でこんな昔の事が夢に出て来たんだろ…

「優鈴、俺そろそろ行くから」
「うん…」

そう、今日から3日間、厳は出張に行くのだ
まだ高校生だが、どうしても厳が現場に行かなければ、ならないらしい

「何かあったら、すぐに電話しろよ」
「電話しても、すぐに帰れる距離じゃあないでしょ」
「それでもだ!」
「はいはい、分かりました」

厳が心配そうな顔をして、荷物を手にする

「げん」

ギュウと、厳の背中を抱き締める

「どうした?」
「ううん、行ってらっしゃい」

そうして、厳は出張に出た

学校や部活では、ずっと厳はどうしたの質問攻め

家に帰ってから、何だか今日は疲れる一日だったなぁ、
と考えていたら、そのままソファーで寝てしまった

「ねぇ、お父さんとお母さんはどこにいるの?」





「う〜ん、また、夢かぁ」

何でだろ、何であの日の事を夢見るのだろ
ふと、そんな事を考えながら、ソファーから立ち上がった時だった

バタン
突然目眩がして倒れ

「あれ、おかしいなぁ」

ゆっくりと起き上がって、ソファーに座る
頭が痛い、寒い、目眩もする…
あー、これはあれだ、風邪だ…
不味い、今は厳が居ない
まだ熱は無いから、早いとこ、部室に行う
そうすれば、ヒル魔達がいるはず…

それからどうやって、登校したかなんて覚えてない…
ただ、段々苦しさが増してきた事だけは、分かった

ガチャ

「あっ!優鈴先輩」
「おはようごさいMAX!」
「優鈴ちゃん、おはよう?」
「ケッ、遅ぇぞ!糞優鈴…?」

みんながあたしに挨拶してくれたけど、今のあたしに挨拶を返している余裕など無かった

タッタッタッ、ギュウ

「うぅ…、よ、妖一、うぅ、げんが、うぅ、厳が居ないの、うぅ、どこ?厳、どこ?」

子供が親を探すかの様に泣くあたしを見て、ヒル魔とクリが不味いという顔した

「テメェ、熱があるだろ」
「厳は、げんはど、こ、ゲホゲホ」

チッ、と舌打ちをしてヒル魔がクリに目をやる、それに気付いたクリが、部員を外に出した
全員が出たのを確認して、ソファーに座り、ヒル魔があたしを抱き締める

「ムサシは3日間出張だろ、明日には帰ってくる」
「嘘だ、あの時だってそう言って、お父さんとお母さん、帰って来なかった…うぅ…」

ヒル魔の口調が変わる
あたしはただ、親を探す子供の様に泣く

「心配ねぇよ、俺がテメェに大事な事で嘘ついた事があるか?」
「うぅん」
「だろ」
「で、でも、ズゥル、うぅ…」
「大丈夫だから、泣くんじゃあね」

そう言いながら、あたしの頭を撫でた

そのままあたしは眠りに堕ち、ヒル魔はただあたしの頭を撫で続けた



あたしが目を覚ましたのは、お昼前だった

「う〜ん、うん?」
「起きたか」
「あれ?ヒル魔…」

ヒル魔の手があたしの額を触る
「熱は大分下がったな…」
「あぁ、ごめん、あたし…」
「ったく、まだ治ってねぇみてぇだな…熱出した、ビービー泣くクセ」
「あぁ、またやっちゃったんだ…」
「ケッ、また覚えてねぇのかよ」
「うん…」
「とりあえず、もう俺はいらねぇだろ」
「あっ、ごめん…」

そう言って、ヒル魔はあたしを離した

「とりあえず、まだ寝てろ」
「うん…」


夕方
ギィ〜、バタン

「!?ケッケッケッ、帰って来るのは明日だったはずだが」
「昨日、様子がおかしいと思って、早めに帰って来たんだが、遅かったみたいだな…」
「ケッ、どんだけ苦労して寝かせたと思ってんだ」
「悪いな、ヒル魔」
「…」

厳はそう言うと、あたしの手を握り、頭を撫でた

「ごめんな、すぐに帰って来れなくて…」
「う〜…、げ、ん?」
「!?」
「おかえり」
「あぁ、ただいま」

うっすら目を開けてそれだけ言い、あたしはまた眠りについた


何でだろう、凄く安心する
そうか、厳が帰って来たからか…
あれ?厳が帰って来るのは明日だったような…



次に、あたしが目を覚ましたのは厳があたしを家に連れて帰ってからだった
驚きのあまりあたしが、ギャーギャー騒いだのは言うまでもない
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