メビウスの輪

□第八夜
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『せんせ〜……おはよーございま〜す……』


ノックをして、もう恒例になりつつあるセブ先生のところにレオを預ける行為。

あくびを噛み殺しながら扉を開き、目元にうっすら隈を浮かべてのっそりと入って来た私を見て、着替えていたらしいセブ先生はわずかに驚きの表情を浮かべた。


「……なんだその顔は?今日がハロウィンだからと言ってバカみたいにはしゃぎ過ぎて眠れなかったというわけではないだろう?」
『まっさか……。むしろハロウィンが今日ってこと自体忘れてましたよ』


ごしごしと目を擦り、ふらふらとした足取りで近づいてくる私にセブ先生がなんとも言えない顔をする。

その顔が私を心配してくれてることが分かり、私はヘラリと笑みを浮かべた。


『だいじょーぶですよ。ちょっと寝れなかっただけですし。せんせーの授業は寝ませんから!』
「当たり前だ、馬鹿者」


私の言葉にセブ先生はそう言って踵を返し、奥へと消えて行く。

どうしたものかと思いながら、私はそろそろと勝手にせんせーのソファーにうつ伏せに倒れ込む。


おぉ、せんせーの匂いだ……。

あれ?私なんか変態臭くね!?

……けど先生の匂いって薬草の匂いとかするし、私としてはその匂い好きだから落ちつく。

お?

このままだと寝れそうかも……


「おい」
『!?』


突然真横から聞こえて来た声に、閉じていた目をカッと開けて私は慌ててその場から飛び起きた。

そして顔を上げれば私のために用意してくれたのだろう。

紅茶の入ったカップを持ったまま呆れたような顔をする先生の姿。


う、勝手なことしてすんません……(汗)


先生の無言の圧に耐え切れず、私は身を小さくする。


「……食べて遊んで放っておけば昼ごろまで寝るお前が寝れないとは……」


先生はそう言って、私の前の紅茶の入ったカップを置いて私の真横に立ってソファーに座る私を見下ろす。


なんだか怖いくらいの視線だ……。


先生からのその視線のせいで、私は紅茶に手を伸ばすことも出来ない。


『まぁ、ちょっと変な体験しちゃって……それであぁ〜、色々あってなかなか寝付けなくて……』


そう言って頬を掻けばセブ先生はため息を吐く。


「ポッターども関係ではないだろうな?」
『あ、あはは……』


半分当たってるかも、と苦笑を浮かべた私にセブ先生は眉間に皺を寄せる。


「ポッターどもと関わるのは止めておけ」
『あ〜、それは無理ですよぉ。ハリーたちは友達ですし』
「マルフォイがいるだろう」
『ハリーたちの代わりはドラコにできませんよ。その逆もしかりで』


私はそう言うと苦笑を浮かべたままセブ先生を見上げる。

私を見下ろすセブ先生の表情がなんだか険しくて、私の背中に冷や汗が……(汗)


「……もういい」


ため息を吐いてから、セブ先生は小さくそう言って机の上に置いてあった私のカップに軽く杖を振る。

そしてそのまま私の体をソファーに片手で倒し、杖を振って引き寄せた毛布をかけてくれた。


『セ、セブせんせ?』
「そんな死人のような顔をして授業にいかれれば、他の先生もやりにくいだろう。朝食までにはまだ時間がある。少し眠れ」
『でも、紅茶――』
「保温呪文をかけた」
『……起こしてね?』
「わかっている」


そう言って去って行った先生の後姿を見届けてから、私は毛布を胸元までかけて体の力を抜く。


「ミギャウ」
『あ、レオ。レオも一緒に寝ようか』
「ギャウ」


私のローブのポケットから這い出て来たレオがそう鳴き、私のお腹に上って丸くなる。

そんなレオの背を撫でながらも私は目を閉じる。

次第と遠くなっていく意識の中、こういうのもたまにはいいかもしれないと思った。


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