メビウスの輪

□第三夜
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「イヴ、起きなさいイヴ。もう朝ですよ?」
『むぅ……うぅ……』


窓から差し込む日の光と母であるミネルバの声に私は眉間に皺を寄せながらもベットからのそりと顔を出してシーツの隙間から外を見る。

視界に入ったベットサイドに立つ母さんの姿に、私は眉間に皺をよせながらも寝起きのかすれた声でおはようと呟いた。


「今日はいい天気ですよ?いつまでもそんなセブルスみたいに皺を寄せてないで顔を洗ってらっしゃい」
『お母さん……それ、せんせーにかなり失礼……』


母さんに突っ込みながらもシーツから抜け出し、上半身を起こした私は背伸びをして大きなあくびをした。


「あくびをするなら口を手で押さえなさい。吸い込まれそうな大口を開けてするなんてみっともないですよ?」
『あ〜〜、はいはい。次から気をつけますぅ』


母さんの声に目を擦りながらもそう言ってから、私はベットから起き足元に置いていたスリッパを履いた。

洗面所に行く前に、ベットサイドで軽く体を動かし関節を鳴らしていると、背後で私の部屋のカーテンや窓を開けて空気の入れ替えをしていた母さんが振り返って私に向かって頬笑みかけた。


「今日は出かけますからね。早く準備していらっしゃい」
『へ?出かけるの?』


母さんの言葉にキョトンとした表情で私は振り返り首を傾げる。


なんか外に用事あったっけ?

セブせんせーなら薬草の調達だ、とかでよく出かけてるからわかるけど、母さんって別に外に出てまで買うものってないよね?

新しいローブでも買うのか?


そんな私に母さんは大げさなくらいにため息を吐くと、苦笑を浮かべたまま口を開いた。


「わからないなら家にいなさい。新学期が始まれば、私だけ学校に行きます」
『あぁ〜〜!!思いだした!思いだしたから大丈夫!!』


本気で置いて行こうと思っていたらしい母さんに慌てて私はすがりつくように母さんにそう言った。


そう、思いだした。

今日出かけるのは私の新学期の準備のための買い物だ。

今年で11歳になり、魔力もあった私は正式にホグワーツへの入学許可書を受け取り、新学期には生徒になる。


私としてみれば自分の事情が事情だから、学校と長期休暇中は母さんの家との間を行き来していたので生徒という実感は正直ないが――。

母さんが授業中の時は、彼女の自室にいたし……


今更生徒として通うと言われても、変な気しかしない。

そう思って悩んでいると母さんが軽く私の背を押した。


「ほら、早く準備していらっしゃい。入学祝いに、ペットを買ってあげますから」
『ホント!?やったね!ずっと欲しかったんだぁVv』


母さんの言葉に感激した私はその場で喜びに何度も飛び跳ねる。


母に今まで何度もペットが欲しいと訴えて来たのだが、ずっとダメだと言われ続けていたのだ。

それが……

それがやっと!!


そんな私を見てミネルバはクスクスと笑う。


「クィレル先生からの入学祝いで、祝い金を頂いてしまいましてね…。そのお金で、あなたの好きなペットを買って上げて欲しいと」
『へ?クィレル先生が??』


母さんの言葉に私は動きを止めて首を傾げたが、次第に満面の笑みを浮かべた。


『うわぁ!すっごい嬉しい!!先生母さんを説得してくれたんだ!!』
「そうですよ?新学期にお会いしたら、必ずお礼に伺いなさい」
『うん!わかった!!』


母さんの言葉に私はニコニコしながらも速足で部屋に備え付けてあるシャワールームの洗面所に飛びこんだ。

そして朝の洗面を早めに済ませて戻ってくると、母さんが私のベットを綺麗に整えてくれている姿が目に入った。


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