メビウスの輪

□第二夜
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タタタタ………


夏期休暇中のホグワーツの廊下を、小さな軽い足音が走っている音が聞こえる。

途中で足音が変になるのは、おそらく躓いたりしているのだろう。

それでも足を止めることなく走り続けるその足音。

部屋で仕事をしていたここの教員の一人、魔法薬学教授、セブルス・スネイプは走らせていた羽ペンの動きを止めて顔を上げる。

気のせいだろうか?

その小さな足跡は確実に自分のいる部屋に向かって来ている気がする。

……きっと気のせいだ。

そう納得したセブルスが再び羽ペンを走らせようと視線を落とした瞬間――




バンッ




『せんせ!隠してっ!!』


黒い髪に一部に金のメッシュが入った、とても可愛らしい顔をした少女がセブルスの私室に転がり込むようにして入って来ると、そう言い放った。

そしてそのままセブルスの答えを聞く間もなく、こそこそとセブルスが腰掛け向かいあっている机の足元のスペースにその小さい体を割り込ませる。


「……何をしている?Ms.エリフェリア」
『イヴでいいって言ったぁ〜〜……』
「それよりも、我輩の部屋に入って来てそんな場所で何をしているかと聞いているんだ」


名前呼びではない事に不満の声を上げるイヴにため息を吐きながらも、セブルスはそう言う。

そんなセブルスに怯えることなく、イヴは笑みを浮かべた。


『いいからいいから。黙ってて?』


イヴはそう言って、セブルスの足元に丸まって口を手で覆って息を殺す。

まったく動く様子のないイヴに、セブルスがもう一度文句を言おうと口を開いた瞬間――




コンコンッ  ガチャッ




「ス、スネイプせ、先生……あ、あの……イヴをみ、見かけなかったでしょうか?」
「……あの子が何かしましたのかな?Mr.クィレル」


セブルスの部屋に入って来た、おどおどしたターバンの男……

クィリナス・クィレル教員に彼は冷たくそう尋ねた。

そんなセブルスの態度におどおどと慌てながらも彼は口を開く。


「あ、あの……その……イヴが、で、ですね?わ、私の部屋で、イ、イタズラをしたのでさ、捜してい、るんです」


おどおどして、手元をいじりながらもそう言うクィレルに、セブルスは無言で椅子ごと後ろに下がって立ち上がり、そしてそのまま机の下に軽く上半身を突っ込むと机の下からイヴを――

まるで母猫が子猫を運ぶ時のように後ろ首を片手で掴んで持ち上げ、クィレルに無言で差し出した。


『あ!先生酷いっ!!』
「イヴ!や、やっとみ、見つけ、ましたよ!」


ぷら〜〜んとぶら下がりながらも必死に逃げだそうと手足を動かすイヴを見て、クィレルはそのセブルスのあまりに乱雑な扱いにうろたえながらもイヴの両脇に腕を差し入れてセブルスの手からひったくるようにイヴを抱きあげる。

クィレルに抱かれながらも逃げようと暴れるイヴは、力の入れ過ぎで顔を真っ赤にしながらもセブルスに怒鳴る。


『先生の裏切り者〜〜!黙っててって言ったのにぃっ!!』
「……私がそれを承諾した覚えはありませんがな。Ms.エリフェリア」


嫌味ったらしく言うセブルスに、クィレルに抱きあげられたイヴはぶくっと頬を膨らます。

空気でパンパンになったイヴの頬を見て、クィレルは頬笑みを浮かべながらも膨らんだイヴの頬を付くと、プスッと可愛らしい音をたててイヴの頬から空気が抜けた。


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