旅人と龍2
□旅人と龍33
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長い長蛇の列を作り歩き続け、ようやくたどり着いた黒い砦のような門の前。
その前に兵士たちが隊列を作って行く。
私は今まで乗っていた黒王の背から降りて、黒王をネロに任せる。
私の後ろに乗っていたネロは黙って手綱を受け取る。
私は兵士たちの間を、黒王を連れてくぐり抜け、隊列の一番前に辿りつく。
「リオ・・・」
『ボロミア・・・』
すれ違う瞬間に、私たちは手を触れ合い、視線をからめ合った。
そしてその手は離れ、私は軍隊の一番前に躍り出る。
そこで私は黒門を見つめ、腕を広げた。
グォオオオォオオオオオオォオオオっ!!!
空に響き渡る、私以外のドラゴンの声。
「大軍だ・・・ドラゴンの大軍っ!!」
「信じられない・・・伝説の神獣が、こんなに・・・っ!!」
振り返ると、いろいろな色の、大小それぞれの大きさのドラゴンたちが私や兵士たちの周りに集まっていた。
その数は20は超える。
それを見て私はただ目を見開いた。
『ぅ、そ・・・』
呆然とする私の肩に触れる手に驚いて顔を上げると、ガンダルフが頬笑みを浮かべて私を見つめていた。
「お主を、ドラゴンたちの真の王と認めたドラゴンたちが――お主のために駆け付けたのじゃ」
その言葉に私は驚いてドラゴンたちを見つめる。
「す、凄い・・・凄いよリオ!」
「奇跡だ!こんなの奇跡だっ!!」
ピピンとメリーが声を上げて喜ぶ。
ドラゴンの中の一頭・・・。
白銀の体を持つドラゴンが私の前に舞い降りて頭を下げる。
≪偉大なる我らが王――≫
頭を垂れるそのドラゴンを、わつぃは黙って見つめる。
そのドラゴンにならい、他のドラゴンも次々と私に頭を下げて行く。
≪我が名はディセリオン。白銀の翼を持つドラゴン≫
『――ディセリオン・・・』
呆然と、私はそのドラゴンの名を呼ぶ。
声からしてまだ年若い青年だろう。
私よりは年上だろうその声に、私は目を見開いたまま見つめる。
≪貴女様がこの地に降りてから――我らはずっと貴女様を見ておりました。貴女様が・・・王の器となるにふさわしいかどうか≫
白銀のドラゴンは顔を上げて私を見つめる。
≪そして我らは、貴女様を王と認め、この地に舞い降りた。王である、貴女様に付いて行くが故に≫
白銀のドラゴンがそう言って息を吹きかけた瞬間、私の体を光が包む。
眩しいほどの光が私を覆い、光が収まると共に私は目を開ける。
すると私は、今までの戦いでよれよれになった服ではなく――
深紅と金の装飾の、中世の騎士のような衣装に身を包んでいた。
私が動くと共に、真っ白なマントが翻る。
頭に重みを感じて触れれば、私の頭には白銀の冠が乗っていた。
≪我らの王――。我らは最後まで、貴方と共に――≫
頭を垂れるドラゴンたちをよそに、私は自分の服装を見つめる。
まるでベルサイユのばらのオスカルにでもなったような気分だ。
夢でもみているような・・・。
しかし、これは夢ではない。
私は、今までずっとポケットに入れていたものを取り出して見つめる。
細く、上品な簪――。
遠い日の初恋の人がくれた、最初で最後のプレゼント。
二本セットの片方は、今はフロドの手にある。
私はそれを見つめると、黙って髪に挿した。
そしてその上からさらに、母ガラドリエルからもらった髪留めで髪をまとめ上げて止める。
最後に――
頭に冠を乗せて私は顔を上げ、私はアラゴルンの横に立つ。
『ドラゴンの王として――。人の子であり、王アラゴルン。今、ここに――』
「――あぁ」
私たちは手を組む。
「『人間とドラゴン。種族を越えてここに同盟を!』」
その瞬間、辺りが歓声に包まれる。
兵士たちの士気が上がり、ドラゴンたちも声を上げる。
私はネロの後ろから黒王に乗り、アラゴルンの横に並んで黒門と対峙する。
その雰囲気に、誰もが息を呑んで私たちを見つめる。
静かに――
波紋のように静粛が広がって行った。