Novel

□禁忌を犯した死神。
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「俺が死ぬときも、死神くんが迎えに来てくれるのかな」


相葉ちゃんが独り事のようにぽつりと呟く。


「んー、どうだろうねぇ」

もしかすると、違う人がお迎えに来るかもね。


「そこは絶対行くって言ってよー!」

「ごめんごめん」

だって想像できないもん。
その笑顔が失くなる世界なんて。


「もし死神くんが現れたら、死ぬまではなにするの?」

「んふふー、死神くんとデートするの!」

「アイス食べてー、映画とか観てー、ふふ…」
「街中で、手とか繋いじゃってさ」





「…リーダーが俺の隣で、俺だけのために笑ってくれるならそれだけで――、そうだな」
「死んでもいいくらい幸せ、かもしれない…なんつって」

楽しそうに話してたのに途中から切なそうに、切望するように目線を下げて笑う相葉ちゃん。


「少ない時間だけど、死神手帳から消したくなるくらい惚れさせるんだー」


そう言った相葉ちゃんはさっきの表情が嘘みたいに、いつもの顔で笑っていた。




おれは死神じゃないけど。
相葉ちゃんの最期を迎えになんて行けないけど。


「おれは、そんなんじゃ足りない」
「え?」
「笑顔だけじゃなくて泣き顔も、怒った顔も、独り占めしちゃいたい」


「ね、相葉ちゃん」
「そんなんじゃ伝わんないよ」

「リーダー…」
「もっとちゃんと、おれを惚れさせてよ」








……おーちゃん、すき、



ぽろぽろ泣きながら、ちいさなちいさな声で愛を囁く相葉ちゃんを「よく頑張ったね」って抱きしめた。


俺の肩口を湿らせる可愛い恋人を抱きしめながら、幸せだなって目を閉じた。


                 END.

 

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