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□苦い恋の華
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「好きだよ」



安っぽく白い、少し歪んだ窓枠。

乱雑とした部屋の中でそれだけが新しく、異彩を放つ。
白に目が眩んで気持ちが悪い。

その隣でウォルターは少しも表情を変えずに僕を見つめた。
それは少し不気味で何の感情も映していないように見える。
チクリとした違和感を感じる。

きっとまだあの事を引き摺っているのだろう。
仕方がない事だ。

けれど構わない。
今の彼を支えられるのは僕しかいない。
彼の隣が相応しいのは僕だ。

そう決心して口を開いた。


君は弱いよ、誰かが護らなくちゃいけない。
 
僕なら護れる。
だって君より強いから。

バジルの代わりに、君の隣に居させて下さい。


「…アンディ」

彼が発する一言だけで、心臓が五月蝿い。
止まれ、止まれ、彼の言葉の続きが聞こえないじゃないか!

きっと彼は僕を受け入れる。
よく分からない自信があった。
だって僕はこんなにウォルターが好きなんだ。
彼だって少しくらい僕に気があるにちがいない。

彼が口を開く。
僕は期待してそれを聞く。


「なんて言ったんだ?」


何も聞こえないんだ。


アンディ?

そう言って不安そうにする彼は酷く幼く見えた。


***

題「毒林檎」様より

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