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□さようなら恋ごころ
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「…なんなんだよ…」

ウォルターは机に突っ伏しながら呟く。
その顔には痛々しい殴られた傷がついている。

しかしそんなことは気にすることではない。
ウォルターが怪我をしていることなんて日常茶飯事なのだから。

「また喧嘩したの?リア充するのはいいけどほどほどにしてね。」

そう淡々と返すと、うるせーと、不貞腐れたようにウォルターは言った。


ウォルターとバジルは付き合っている。

彼らは実によく喧嘩をする。
元々、どちらも喧嘩っ早い性格をしているし、なにより基本的な性格が違う。
この学校に入学して一か月と経たない内に喧嘩をし、教室のすべての窓ガラスを割ったというのはあまりにも有名な話だ。

そんな二人がある日突然付き合いだしたのだ。
最初は僕も周りのクラスメイトと同じように、
ついに二人の頭がお互いに殴りすぎておかしくなったのかと思った。

けれど、付き合ったことを報告しに来たウォルターの横で柄にもなく真っ赤になっているバジルを見て、いよいよそれは現実のものとなった。

僕はそれを知った時、とても驚いたし、祝福もした。
けれどね、その時僕の頭の中はどうやったらウォルターを取り戻せるか、という卑しい考えでいっぱいだったんだ。

最初は、いっつも喧嘩ばかりしている二人だから、すぐに別れるかと思った。
けれど、何度喧嘩をしても別れないし、ウォルターの惚気話はどんどん酷くなっていく。

あ、こいつらガチだ。
そう気が付いた僕は今更焦りだした。

ウォルターはバジルと付き合いだしてから、僕と一緒にいる時間が確実に減った。

僕はどこか安心してたんだ。
ウォルターの隣はずっと僕のものだっ、て。
何の根拠もないのに。
だって僕たちはほんの小さなころからずっと一緒にいたし、誰よりもお互いを分かりあってる。
それは揺るがない事実だし、疑いようがない。
バジルなんかよりずっとウォルターの事を理解してる。

でもさ、近くにいるからこそみえないものってあるじゃない。
ウォルターがバジルを好きだったこととか、
僕がウォルターを好きだってこととかね。

「あーあ。馬鹿みたい。」

こんな一途な奴他にいないよ?
もったいない。

「…知ってるっつーの…」

人の気も知らないでウォルターが溜息を吐く。

瞬きをするたびに揺れるまつ毛、
夕方の風に揺れる赤い髪。
僕は昔からこれが好きだった。
ずっと眺めていたい、守りたい、そう思った。
ウォルターの幸せは僕の幸せだ。
だから、だから、

「…絶対に幸せになって、ね」

決してウォルターと眼を合わせないように言う。

「…おう」

少し照れくさそうに笑って、頭をワシャワシャと撫でられた。



さようならごころ
(もう僕の出る幕はない)



◆◇◆◇◆

アンディは一途に想い続けるイメージ。

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