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□オドントグロッサムはただ一人
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真っ赤に汚れたスーツが目に痛い。

「お帰りなさい。」

バジルはその言葉が聞こえないかのようにバスルームに向かった。

大量の水が流れる音が聞こえる。

汚い汚い汚い汚い……

そう呟きながら狂ったように水を浴び続ける。

「汚い汚い汚い汚いっ!」

そう言いながらバジルは泣き出した。
嗚咽を漏らしながら泣くバジルをびしょ濡れになりながら抱きしめる。

「大丈夫、私がいるよ。」

大丈夫、大丈夫。
何が大丈夫なのか分からないまま、私はうわべばかりの言葉を呟く。
大丈夫、大丈夫…

バジルがしゃっくりを上げながら口を開く。

「ひつようと、されたい、」
「私にはバジルが必要だよ。」
「ずっと、そばにいてほしい、」
「最期まで一緒にいるよ。」
「あいされたい…!!」
「私は、私が、誰よりも貴方を愛しているわ!!」


「誰だっていいんだ」


知ってる。

貴方が、私を見ていないことも、
私じゃなくて、誰だっていいことも、
私じゃ貴方の一番になれないことも。



それでも、私は、

「ずっと隣にいるよ。」




オドントグロッサムはただ一人




バジルは泣き疲れたのか子供のように眠ってしまった。
私はバジルの金色の髪の毛を撫でながら呟く。

「大丈夫、大丈夫……」

バジルではなく、今度は自分に言い聞かせるように。

大丈夫、大丈夫、

まだ、離れない。
まだ、触れられる。
まだ、一緒にいられる。

大丈夫。

「…お休みなさい。」

そういって臆病者はは眠りについた。
(嗚呼、どうか、隣にいるだけでいいのです)




◆◇◆◇◆◇

オドントグロッサムの花言葉:特別な存在

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