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□私についてくればいい
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暗い廊下を一人の女が歩く。
女は、左顔を包帯で隠し、なおかつ長い黒髪で覆っている。
歳は二十代にみえる。

女は一つの部屋へ入っていった。


「失礼します。」
「やあ、少佐。今日も相変わらず美しいね。」

そういって迎えたのは一人の男。
歳は四十代後半といったところだろうか。

「…それは、傷物である私への嫌味ですか?」
「はっはっは、君はその火傷痕をふまえても美しいよ。」
「さようですか。…で、ご用件は。」

少佐は無表情で返す。

「うむ。今回、君は少佐に昇格した。それに伴い、護衛がつくことになった。」
「失礼ながら大佐、私に護衛は必要ないと思われます。
そこらにいる尉官などより腕がたつ自信がありますゆえ。」
「まぁそういうな。今回君の護衛につく中尉は、下士官時代に君の兄弟についた男だからな。
面識ぐらいあるだろう?」
「記憶にありません。」

即答した少佐に呆れながら大佐は続けた。

「そんなものか。…まぁいい、はいりたまえ。」
「失礼します。」

入ってきたのは鋭い眼をした男だった。
色素の薄い髪。
がたいの良い体。
立っているだけで威圧感を感じるような男だ。
歳は三十代か。

「狙撃隊から配属されました。これからよろしくお願いします。」




暗い廊下を二人の男女が歩く。

「で、どうなのぉ?」

少佐の口調は大佐の前とは打って変わり、気怠そうな口調だ。

「は、と申しますと。」
「だからぁ、あたしを見てどう思ったかをきいてるのよ。あんたは十は違う小娘の下につくのをどうおもってるわけぇ?」

少佐の急激な態度の変化にも表情を変えず、
中尉はかえす。

「もちろん光栄に思っております。
私は貴方に忠誠とこの身を捧げるつもりであります。」

実に模範的な態度である。

「ふぅん。つまらない答ねぇ。まぁいいわ。すぐにあんたなんて追い出してあげるから。」

少佐はニヤリと笑う。

私についてくればいい
(さぁ、何時までもつかしら 耐えられなくなるその時まで)

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