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□誰より何より清廉な白
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白に赤が染まる。

「あ。」

昼食であるスパゲティ。
たっぷりと赤いトマトソースがかかっている。
空腹に耐え兼ね、勢いよく口に運ぶとソースが零れた。
それは首から下げたナプキンに小さな同じ色の染みを作る。

「アンディ、汁飛ばすなよ。」
スパゲティも満足に食べれないなんてまだまだ餓鬼だな。
そう言ってウォルターはニヤリと馬鹿にしたように笑った。

「ウォルターもね。」
指の差した先には同じく赤い染みのついたナプキン。
一瞬苦い顔をすると、フンと鼻を鳴らして麺を口に運ぶ。
「食べ方は人それぞれだろ。」
「何それ。」
さっきと言ってること違うじゃん。
そう言ってクスリと笑った。

それにしても、
「白は汚れが目立つなあ。」
ウォルターが自分の胸元をまじまじと見つめる。
真っ白な布に点々と散らばる赤い染み。
もし布が白くなかったらここまで目立たないだろう。

「もしかしたら、コートを脱がない方が良かったかもな。」
自分の言葉にクククと喉の奥で笑う。
ウォルターは笑ってばかりだ。
確かに、あの赤いコートなら赤い染みなど心配無用だろう。
「そうかもね。」
そう言ってまたひとつ赤い染みを作った。


「おなか一杯だね。」
「俺、しばらくあそこに通うわ。」
すげー美味かった。
満足げに息を吐く。
トマトの味というより香辛料の味。
麺はアルデンテなんてお話にならないような湯で加減。
味が濃くて柔らかい。
子供が好みそうな食べ物だ。
凄く美味しいというほどの物ではない。

「ウォルターはまだまだ餓鬼だなあ。」
先ほどの言葉をそのまま真似る。
「顔の話はもういいだろ。」
気を悪くしたのか他所を向く。
歳の割に顔が幼いことを気にしているのだろう。
幼いのは顔ではない。
「味覚の話だよ。」
ウォルターと逆の方向に歩き出す。
「どこに行くつもりだ。」
フードを掴まれ引き摺られた。
赤いコートの端からウォルターの笑った横顔が覗いていた。
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