紅の十字架

□元帥への推挙
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「……はぐれた……水を買いに来ただけなのに
……いや、能力を使ってもいいけど最近、使うと眠くなるんだよね……リリィの記憶が表層化してくることが多くなってきたからだとは思うけど……」

街の真ん中で一人ため息をつきながら雲雀は考えたが考えるよりも足を動かした方がいいという結論に至り、買い物袋を抱えながら歩き出すと後ろから声をかけられるなり目を見開く

「やぁ、恭弥」

そこにいたのは自身の師匠であるティエドール元帥、その他にも調査部隊が何人かいたのだから

「!?」

「臨戦態勢に入る気持ちもわかるけれど、神田は一緒じゃないのかい?」

「は……?」

「神田のゴーレムが繋がったとかで探しに来たんだが」

「ーーーーッ!?」

「恭弥!?」

「(ユウがゴーレムをONにするはずがない。だって、教団から離れてジョニーに協力している可能性もある、なにか、あった)
上から探す方が早いか……!」

建物の屋根に跳躍し、屋根伝いに神田の姿を探していく。ゴーレム同士通信する訳にはいかないため視覚に頼りゴーレムを探し出すと地面へと軽々と飛び降りる

「!!いたぁーーーー(泣)」

「ユウ!!!」

「…………(俺……?教団に帰る途中で、倒れたのか……?腕の痛みがひどくなって、ジョニーが咎落ちの前兆かもしれないと心配して……恭弥が水だけ買いにいくといってそれを待ってて、六幻(イノセンス)を手にした以上俺たちがふたりと一緒に行けないことははじめからわかっていた。俺と恭弥は教団に戻らなければいけない
それであいつらを見送ったんだ)」

「ユウ……?」

「キミたちじゃ返り討ちにされるだろう。私が話すから見張っていてくれ」

「師匠……、そういえばどうして」

「それは後で話そう。ところで、六幻が道端に落ちていたよ、神田。このままではマリとリナリーが中央庁に拘留されてしまうかもしれない。理由はわかるね?
なぜ無断で教団を出た?キミたちはアルマ=カルマとの逃亡や千年伯爵に協力した疑いで一度中央の信用を失っている身なんだぞ」

「!?ぐっ……!?」

「!?神田?」

雲雀が目を見開きながら嘔吐する神田を支えると違和感に気がつく

「ユウ、怪我してないように見えるけど、呪符……なんで……」

「どうしたんだ、しっかりしなさい神田!?」

「この感じ、なにか。おかしい……」

「恭弥?」

「……テイムキャンピーか……ッ?」

「!?」

「おいっ、」

「ティムだと……?」

「あいつはどこ行ったんだよ、おい!」

「ティムに見えないけど、いつもなら再生するはずなのに…」

「くそ……っ、何がどうなってやがる……っ。恭弥、あいつらの気配をたどれないか!?」

「えっ、え、アレンはわからないけど、もう1人なら……東南の方向に、」

雲雀が狼狽えながらも指を指すと、同時に背後にいた調査部隊の面々もティエドールへとアレンやジョニーの所在地報告をしていた
そして神田が持っていたものをそっと地面へと下ろすとティエドールの胸ぐらを掴む

「…………」

「ぷっ、あははははははは」

「!!」

「な、何、師匠……?」

「やー、キミたちってホントあはっ、あはははは、ぶっ、不器用だなーと思って、便秘みたいな顔してさぁ……神田、私に頼み事があるんだろう?」

「!」

「おかえり、ユーくん。キョーくんも。キミたちに会えて本当に本当に嬉しい。これを先に言うのを忘れていたね
表向きは神田ユウと雲雀恭弥の追跡、および捕獲任務だが、私がここへ来た目的はひとつだ。可愛い弟子のキミたちを守ること!」

「だが、どうやらキョーくんも知らないところでキミは危なっかしいことをしていたようだな。ま、キョーくんもキョーくんでユーくんの知らないところで無茶したみたいだけど」

「うっ……」

「…………頼みます、元帥………………。あいつが【14番目】になった時は俺が必ず斬る……。だが今はあいつらを行かせてやってほしい!」

「!ユウ……」

「ダメというなら、俺は今ここであんたを殴って気絶させる」

「僕からも、お願いします。元帥」

神田の言葉に雲雀は一度目を見開くがすぐにティエドールに向き直り、頭を下げる。そんな2人の姿に対してティエドールは間を置きボリボリと鼻を書きながらも答えを返す

「さっきも言ったがキミたちは中央の信用を失ってる。しかも今回の件ではまったく弁明の余地がない
許しと引き換えにどんなエグイ罰を与えられるか!私はそれは嫌だ
だから条件は、中央庁にキミたちの忠誠心と力を見せること。それなら協力しよう
ーー元帥になりなさい。2人とも、ね」

「「………………は?」」

「うまいことにちょーど今元帥が不足してて上の人たちが困ってるしねー」

「えっ」

「ちょ、まてオイッ」

「キミたちの実力はもうだいぶ前からとうに元帥レベルだ。臨界点だって実は突破できるの隠してるんじゃないかい?
それとも、覚悟がないのかな?憎むべき教団の中枢に入ることに」

「(憎むべき、教団でしかもその中枢。確かにそこに入るには覚悟もいる
でも、僕はまだ自分について何も分かっていない。ネアを追うものがノアや教団だけじゃないなら、僕も他人事じゃない。やるべきことがまだまだある、それまでに中央庁に好き勝手されるくらいなら)
ーー僕はやる」
「上等だ!」

同時に告げた言葉にティエドールは優しく微笑む。それは修羅の道になるかもしれないと覚悟を持った2人へと向けられる師の眼差しだった


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