紅の十字架

□元帥への推挙
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「それにしても元帥の席がふたつ空いてるからって僕を元帥にしようだなんて」

「あの人の考えることだ。何かあるんだろうが……だが、今は助かる」

「中央庁から監視付きそうになるくらいには疑われてたし、危険対象だと判断された上に自分の意思が封じられてたとはいえ千年伯爵に加担したようなものなんだけど」

「俺も逃亡したからな。だがそれに見合うだけの忠誠心が元帥になると言うことなんだろうが」

「……中央庁は今でも嫌いだし、教団もユウも大っ嫌い」

「ハッ、やっと言いやがって」

「……大っ嫌い。でも、それ以上にユウがちゃんと見てくれてることがすごい安心するし好き」

ふわりと破顔した雲雀の頭をがしがしと乱暴に撫でながらつられて神田も微笑む。しばらくしてから雲雀は神田の胸部へと手を伸ばすと静かに問う

「……ところでさっき呪符が発動してたけど外傷とかじゃないよね?」

「あぁ。……脳の中をいじりやがったから記憶を修復するために呪符が発動したんだろう」

「記憶を、修復……?」

静かに少し前に起こったことを掻い摘んで話していく神田に雲雀は顔を青ざめさせる

「(まさか……記憶をいじることができる奴がいる、それが……ネアを追う他の存在……)
人の形をした、イノセンス…………?【ネアとアレは出会ってはいけない】」

「お前、今……」

「くそ…………っ、(またリリィの記憶の存在が。でもなんだ……死神と呼ばれる男……、怖気がする)」

「……俺はあいつに伝えたいこと何一つ伝えてねェし、まともに喋ってもいねェ
元帥になったら今は見逃してくれるってのは本心だろう……あいつらは実力なんかよりも忠誠心を求めてくるだろうからな」

「だね。……尤も、僕はそれについていけるかどうかは時間の問題だけど。この記憶にケリつけて押し殺したらそれはそれで認めるきっかけになるだろうから
…………あーあ!なんかスッキリした!臨界点突破できるの隠すって地味に面倒だったし」

大きく伸びをしながら歩き出し少し先にいるティエドールの元へと歩みを進めていくと年相応のように悪戯っぽく笑う

「元帥と一緒にいるとアレン、めちゃくちゃ恨み言言ってきそう。ま、関係ないけど
ところで、師匠」

「ん?なんだい、キョーくん」

「いや、その呼び方ちょっとやめてもらっていい?ほんと変わらないんだから」

「場所は弁えてるつもりだけどね。調査部隊の皆も少し離れている事だし」

「…………(ほんと察しがいいんだから)
師匠、僕が【戻れなかったこと】に対してなにか見解とかある?」

「ふむぅ、それに関してだね。私個人としては恐らくーー戻る場所がなかった、もしくは躯そのものもこの世界を求めていた、かな
きっと消えたことに関しては単純に世界から切り離されたというよりも滞在にあたっての生命力のようなものが補えなかったのだろう。
人が睡眠をとって、体力を回復するように存在するに対しての力を無意識に回復した、そう私は考えているよ。実際のところはわからないがね」

「……なるほどね。じゃ、まだまだ僕は死ねないって訳だ」

「私の可愛い弟子たちをそう簡単に死なせたくないヨ。……もちろんマリもね」

「マリとリナは……」

「まだ拘留はされていない。でも時間の問題だろいだろうね」

「ユウにとって大切なものだし、僕にとってもこの世界に来てからとてもよくしてもらったし、僕たちの身勝手な行動で拘留なんてさせたくない
……早く、この問題だけは解決しなきゃ」

「あぁ。そのためにも、さっさとモヤシ共を探すぞ」

「そうだね。で、師匠。気になってたこと聞いていい?」

「なんだい?」




「なんで、調査部隊だけでなく教団関係者めちゃくちゃこの近辺に集まってるの」



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