紅の十字架

□休息の間の話
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「落ち着いたかい、恭弥くん」

神田と一度わかれ室長室へとやってきた雲雀へと声をなげかけるコムイ。そんな彼に対していつものように無愛想に返事をする

「少しだけ。……クロスだけじゃなくてこれはコムイ、君も関与してるでしょ」

「エッ、そそそそ、そんな……ねぇ……」

「……悪かったね、心配かけて」

「エッ、うそ!あの恭弥くんが素直……!まさかティエドール元帥の作ったアートオブ恭弥じゃないよね!?」

「うざ……。それよりも、異端審問……かけられる可能性があったんでしょ、アレン」

「!どうしてそれを」

「クロスからの伝言であった。……【俺とアレン、恭弥それぞれへの異端審問または監視がつく可能性がある】と」

「……そこまで元帥は察していたのか。……幸い君はクロス元帥との関わりがあるだけで、弟子では無いという点と奏者の資格があるかは定かではない、ということで一度君への監視はなくなったよ
これもクロス元帥の提案だけどね」

「14番目の関係者、その可能性があることは否定しないし、できない
何せ僕は、数多の記憶で出来上がった造り物だから」

「恭弥くん……」

「……わかってる。でも僕は人と違って純粋な人間じゃないし、そうは成れない
でも、これも僕のひとつだから。……ちゃんと向き合うことにした」

「変わったね……」

「ん、……ユウにもバレちゃったし、もう怖くないなって」

「そうか」

「恭弥くんの帰ってくる場所はいつでもここだからね。君のいた他の世界にも居場所はあったと思うけど、それでももう1つのホームだとでも思って欲しい
ーー君はここに帰ってきていいんだよ」

「!……っ、おかしいな……、ユウにたくさん言われてる言葉なのに……」

頬をつたう一筋の涙を流しながら自分でその涙を救いながら話を変えるように雲雀はおずおずと口を開く

「そういえば……異端審問、ってことは中央庁とか支部長たちが来てるんでしょ」

「まぁね……。バクちゃんもいるよ
おかげでボクも疲れちゃったよ〜!!諮問早くリナリーに癒されたいぃぃぃ!!!」

「シスコンは僕のいないところでやって。……じゃ。バクでもいじりにいって来ようかな。最近アジア支部行ってないし」

バタン、と室長室の扉を閉めながら扉の外で待っていた神田と目が合ったが少し離れた場所でリナリーが駆け足で歩きながら叫んでいるのを耳にする

「兄さん!兄さんはどこ!」

「……リナ?」

「やけに慌てているな。アイツは部屋だろう?」

「うん、そうだけど。リナに教えてこよう。ちょっと行ってくる」

「!おい……!」

「リナを呼んだら直ぐに戻るから待ってて!あ、後で久しぶりに手合わせしよう!やっとお互い動けるようになったし!」

神田による制止の声も届かず雲雀は駆け出しリナリーの方へと走っていく。
その先に待っているものが過去の忌々しい記憶を引き出すきっかけが待っていることを知らずに


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