すべてが終わってしまう前に

□インターハイで待ってます
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「先輩達…手こずってますね。やっぱり第2・3Q丸々20分引っ込むと効力を戻しますから」


【うおおマジか!?差が詰まってる…!?】

【まさか…ウソだろ…!?】


黒子が引っこんでいたことによりミスディレクションが効力を取り戻し序盤と同じような試合展開になっていた
しかし、日向のシュートに恭は携帯をポケットにしまいながら立ち上がり目を見開く


ガタッ!


「ど、同点…!?」


82対82という数字が並び周りに歓声が湧き上がる


【同点だぁー!?誠凛、ついに追いついた!!】


「ーーーー同点!?」


黄瀬が不敵に笑い、目を細めたことに気づき恭は黄瀬へと視線をやった。恭と同じように黒子と火神は雰囲気が変わった黄瀬に気がつく
先程とは比べ物にならないほどのオーラを発し、黄瀬は黒子をあっさりと抜いてしまい火神の前に現れる。火神が黒子の名を呼び黒子が黄瀬のボールを奪おうとするが、そのボールは取られることなく、黄瀬は火神をも抜き去るとそのままゴールを決めた


「オレは負けねぇスよ、誰にも。黒子っちにも」


「(黒子を見切るなんて……)本当、涼太の成長は目を見張るものがありますね……
ここからは試合終了まで点の取り合い (ランガン勝負)です」


残り15秒で98対98。同点の状況下だった


「っの…!しぶとい…!!トドメさすぞ!!」


「残り10秒を切った……。誠凛には延長を戦う体力は残っていません。せめて延長戦にさえ持ち込んでくれれば……!」


「なっ…」


【うわぁあ、獲った!!マジかよ!!】


「黒子!!」


笠松のシュートを阻止した日向へとボールが渡り、続くように火神と黒子が走る
そこに立ちはだかる黄瀬は思考を巡らせる


「(黒子っちにシュートはない!二人だったら火神にリターンしかないスよ…!?)」


「!?あのテツヤが、パスミス!?」


誰もが驚愕の表情を浮かべるが、そんな中で気づいた笠松が叫ぶ


「……じゃねえ!!アリウープだ!!」


「させねぇスよ!!……!?」


ボールの先に跳んでいる火神、そしてそれを阻止するように跳ぶ黄瀬
しかし、火神はいつまでも宙におり、同時に跳んだはずの黄瀬が先に落ちていることに恭は戸惑いを隠せずにいた


「え…いつまで、火神…宙にいるの…」


「テメーのお返しはもういんねーよ!!なぜなら……


これで終わりだからな!!!」


ゴールに叩きつけた音が体育館に響き、その音は火神はブザービートと共にゴールを決めたことを知らせていた


【うわぁあぁあああ!!誠凛が!?勝ったぁああ!!!)


「うおっ…しゃあぁあーー!!」


「…………」


笠松が手を腰にやり息を吐き、ベンチに座っている監督の顔は引き攣り、恭はしばらく呆然としていたが、やがて黄瀬の元へと走っていく


「負け…たんスか?」


「…うん、私達は負けたんだ。お疲れ…涼太」


「(生まれて…初めて…負…。しかも、恭の、前で……)」


「涼太?」


「あれ?あれ?」


「涼太、おいで」


黄瀬から涙が零れ、震えながら必死に涙を拭うが止まる気配がない。そんな黄瀬を恭は優しく抱き締めた


「……っく、恭……っ、恭…!」


「負けたのは悔しいよ…私も、勝つって自負していたんだから
でも、これで涼太はまた強くなれた」


黄瀬の頭を撫でながら恭は静かに呟く


「黄瀬、泣いてねぇ?」

「いや、悔しいのは分かっけど…練習試合だろ、たかが…」


「そこ、黙りな。一生懸命戦った選手に言うのは野次なんかじゃないだろう」


観戦していた各々に恭はピシャリと言い放つと指摘された男子生徒たちは言い淀む


「うっ……悪い…」


「っのボケ。メソメソしてんじゃねーよ!!藍川も立ち止まんな!!」


落ち着いたのか恭から離れて立っていた黄瀬に笠松は蹴りを入れ、恭の額にデコピンをする


「いたっ!」

「いでっ」


「つーか、今まで負けたことねーって方がナメてんだよ!!シバくぞ!!」


「もうシバいてます…主将」


「そのスッカスカの辞書に、ちゃんと「リベンジ」って単語追加しとけ!振り返ってる暇はねぇぞ!!」


笠松の言葉に恭は、はにかみながら答えると黄瀬の背中を押して整列した面々へと押しやる


「はい!主将!!涼太!整列して」


「はい…っス」


【整列!!100対98で誠凛高校の勝ち!!】


「「「ありがとうございました!!!」」」


互いに試合終了の礼を行って、誠凛の選手たちを送り出す時、恭はリコへと近づいた


「相田監督」


「ん?あ、藍川さん……」


「ありがとうございました。今回、貴女たちと戦うことができて、私も涼太も大切なことを学んだ気がします
地区が違いますから、インターハイまでリベンジはお預けですね。次は負けませんから

インターハイで待ってます」


「私こそ、貴女を見直しちゃったわ。絶対にインターハイに行くから。貴女たちも負けないでね」


リコと固く握手してから近くにいた黒子に声をかける


「はい。あ、テツヤ…ありがとう。中学からやっと前に進めた気がする
時間があればまた遊びに行くよ」


「はい。今度リングの弁償にマジバ奢ります」


「楽しみにしてるよ」


「藍川、黄瀬を呼んで来い。もう頭も冷えただろ」


「わかりました。呼んできます」


誠凛を送り出した笠松が恭に告げると、身を翻しながらその場から去っていく


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