短編集
□幸村精市の憂鬱
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「精市、つかぬ事を聞くが……恭弥には恋人がいたのか?」
「?!」
柳の突然の質問に幸村は目を見開いて口をポカン、と開いたままだった
「精市も知らないのか。いや、少し前に街で恭弥を見つけてな…後姿だったから顔はわからないが、黒髪の男だったな」
「俺はそんなの知らないよ!?え、恋人!?しかも男!?」
「友人かと思ったが、手を繋いでいたからおそらく恋人なのだろう」
「て、手を…!?」
「合同合宿中にそんなことをしておるとは、たるんどる!!」
「真田は少し黙ってて。ちょっと詳しく聞かせて!
お兄さんは恋人なんて許しません!!」
「構わないが…部活はどうするつもりだ?」
「真田、任せたよ。幸村家の一大事だよ!」
「わかった。俺が練習を見よう、任せておけ」
「頼んだよ、真田」
真田がその場から離れていき、幸村は柳へと詰め寄る
「どこで見かけたの?」
「確か、俺がスポーツ用品店に寄ってから帰ろうと思って歩いていたんだが、途中で恭弥が甘味処から出てきて声をかけようかと思ったんだが、黒髪の男が待っていたらしく彼に駆け寄っていたな」
「他に何か特徴とかわからないかい?」
「あ、そういえば…今思い出したが…あの制服は確か四天宝寺だったな」
「ん?黒髪で四天宝寺って……」
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