短編集

□幸村精市の憂鬱
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「ん?財前に用?」


「うん。少し聞きたいことがあるんだ」


「別に構わへんけど、珍しいな。幸村君が財前に用って」


「うん、ちょっとね」


「ま、言及はせーへんけど。お、ちょうどええとこに来たわ

おーい、財前ー!!」


通りがかった財前を見つけると白石が叫ぶと気づいた財前は幸村と白石の元にやってきた


「くだらない用なら帰りますよ、白石部長」


「くだらんかどうかはしらんが、幸村君が財前に聞きたいことあるんやて」


「幸村さん、って恭弥の義兄っすよね」


「やはり君か……恭弥の恋人は!!」


「は?えっ!どういうことなんです?」


「君と恭弥が手を繋いでいるって目撃情報が出てるんだよ
で、恭弥と付き合うには俺の許可がいるっていうことを言いたくてね」


「はぁ……まさか、恭弥から何も聞いてないんですか?」


「どういうことかな?」


「俺と恭弥は小さい頃の付き合いなんすわ。恭弥とはただの幼馴染なんですよ
小学校三年までは同じ学校やったんで」


「あ、光ー!って何で精市も?」


「恭弥、お兄ちゃんはお付き合いなんて許さないからね!」


「……もしかして、光のこと言ってるの」


「みたいやで。恭弥、お前…ちゃんと言ってないんか」


「別に言わなくていいじゃん。っていうか光、忘れ物」


「お、サンキュー。しかし、お前んとこ大変やな
こんなブラコン兄貴がおって」


「もう慣れたけどね。ついでに言っておくけど、光とは昔から行動する時は手を繋ぐんだよね」


「ん。昔からの癖やからなー…まぁ、それで勘違いして互いの逆ナン避けになるからええんやけど」


「違いない」


二人で笑い合う光景に幸村と白石は呆然としたまま立ち尽くしていた


「まぁ、そんなとこっすわ。んじゃ失礼しますー
あ、恭弥。ぜんざい美味かったわ。おおきに」


「どういたしまして」


「ちょ、ちょっ!どういうことや、幸村君!」


「俺だって知らないよ!」


「まぁ、見たまま。光とは別に恋人とかじゃないってことだよ
しかし…まぁ……恋人って…っ!」


「よ、よかった……。恭弥が俺から離れるんじゃないかと思ってしまったよ
まったく、苦労かけさせないでよ」


「いや、まさか光と恋人に見られるとは思わなかったよ……っ
久しぶりに光が来たから彼と一緒に甘味処巡りと食材の買い出しに行ってたんだよ」


「へぇ、ウチの財前、気難しいやろ?毒舌っちゅーか…」


「そうですか?光も何だがんだ言って結構先輩のこと好きみたいですよ
楽しそうに話すので」


「……っ!ざいぜーーん!!」


バッと白石は財前の後を追っていくのを見送りながら雲雀が幸村に対してフッと微笑んだ


「ちゃんと恋人ができたら教えてあげるから。今の一番は精市だよ」


「……つ!恭弥、大好きだよ!!」



「はいはい」


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