短編集
□神の子VS皇帝
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「ん?……真田と、精市……?」
ボールを打つ音が聞こえてそちらを向けば真田と精市がネットを挟んで対峙している光景が目に飛び込んだ
「先輩方見ーっけ」
近くで様子を見ている立海メンバーに近寄るとこちらに気づいた赤也が駆け寄ってきた
「きょ、恭弥!何でここに!?」
「そんなことはどうでもいい。ねぇ、何であの二人が試合しているわけ?」
「そ、それが…2人組を作れって言われて……その2人組でダブルスするのかと思ったら、シングルスで勝負しろって言われて……」
「っっ!!」
「恭弥?」
な、に……真田のあの気迫……っ
怖い怖い怖い!!精市とは違う恐怖が体を締め付ける
「赤也……あれ、真田…だよね……」
「えっ?あ、そうだけど…。恭弥、顔色悪いぞ!具合でも悪いのか!?」
「い、今のボール…見えたか?」
「……いや」
「…………」
隣で真田が打ったのであろうボールが見えなかったことを三人が呆然としたやり取りが遠く聞こえた
しばらくして金縛りから解けたように恐怖が霧散して精市へと目を向ける
「テニスを楽しもうと思った。けど、そんな余裕はなさそうだ」
そこからは再びラリーが始まる
でも決着が着くのはそう時間はかからなかった
「ゲームウォンバイ幸村7−1!!」
試合が終わり精市に近づく真田に手を差し出すがその手は握られることなく空で止まった
「真田……」
「これで真田は柵からは開放されたね」
「しがらみ?」
「常勝立海を背負っていたのは精市だけど、療養中は真田だった
でも…真田は自分自身の為に試合をできなかったからね」
「…………」
「恭弥…来ていたのか」
「まぁね。……お疲れ様」
それだけ真田に言うと精市の元へと向かって歩き出す
「精市、さっきの試合中の真田……」
「恭弥も気づいたか。彼に恐怖を感じたよ…俺らしくない」
「僕は足が竦んで動かなかった。さて、その話とは別になるんだけど…
はい、ドリンク」
「苦労をかけるね」
「ついでだからね。しかし、何でこんな招待状が来たんだか」
封筒を取り出すとこの場所への地図と手紙にはこの場所に来るようにとこの合宿に参加するようにとの文面
「何で僕が参加するのさ」
「さぁ。…ん?」
「ようやく来てくださいましたね、雲雀恭弥君。いえ、幸村恭弥…」
声の主は軽く2mはいくであろう長身の男だった
「……誰」
「私は斎藤至。この合宿の精神(メンタル)コーチを務めています
以後お見知りおきを」
「へぇ、僕はこの合宿に参加するつもりはないよ
ただ僕は届け物をしに来ただけだ」
「そういうわけにはいかないんですよ。君が不参加を申し出るならば、君の所属する立海大付属の選手は無条件で脱落させる、と上から言われていましてねぇ……」
「っ!?……随分と悪趣味な取引だね」
「恭弥、君のしたいようにすればいい
俺たちは気にせず…「精市は合宿にいたいかい?」えっ」
「精市はたくさん我慢した。だからもう自分の気持ちに我儘になってもいいよ」
「俺、は……できなかった分、テニスを楽しみたいと思っている」
「わかった。じゃあ、僕もこの合宿に参加しよう
ただし、僕はあくまでも立海大付属のマネージャーだ。だから立海のみんなを支えることを最重要とするよ」
「わかりました。そのように伝えておきましょう」
「恭弥…本当、君には苦労をかける」
「そう思うなら、絶対に勝ち上がりなよ」
「フフ、もちろん」
握った拳を合わせて笑いあう
これをするのは三年ぶりかな。懐かしい思い出
面倒ごとは嫌いだけれど、強いやつをねじ伏せるのは楽しいからやろうか、合宿
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