すべてが終わってしまう前に
□結局はそれだけ簡単で単純な事なんだよ
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「……っ」
「高尾」
「あ…雲雀……わ、悪い…ちょっと待ってて」
目の前に立つ雲雀から顔を背けようとした高尾だったが、ふわりとした感触に包まれた
「お疲れ様、二人とも」
「!……雲雀…っ、ありがとな…!」
「うん。…緑間もよく頑張ったね」
「雲雀……黄瀬のところに行かなくていいのか…?」
「うん。涼太は大丈夫だよ
やることは全てやってきた。緑間がよく言ってる人事を尽くした
だからさ、涼太は大丈夫
負けてもいい、涙はかっこ悪くなんかない。涙を流せるのは生きてる証拠なんだから」
ね?と微笑みながら雲雀は高尾から離れて二人の頬に伝う涙を拭いながら告げる
しかし次は緑間に抱きしめられる
「……もう少しだけ、ここにいてくれ」
「雲雀、やっぱスゲーわ…。なんでそんな欲しい言葉をスッと言ってくれるのかね」
「全部、中学の頃に緑間が僕に言ってくれた言葉だよ」
「俺が……?」
「そう。僕がコンクールで準優勝だった時、泣いてさ…見に来てた緑間が言ってくれたんだよ
その時、とても嬉しかった。緑間の服、ぐしょぐしょにしちゃったっけ」
苦笑いする雲雀に緑間は思い出したようにあぁ、と声をあげるとその口元には笑みが浮かんでいた
「そういえば…そんなこともあったな。あの時は分からんかったが、やはり負けるというのは悔しい
…相手があの赤司とはいえ、負けるつもりはなかったからな」
「知ってる。キセキのみんな、負け知らずで尚且つ負けず嫌いだもの
涼太や紫原、青峰に赤司や緑間…黒子だってそう。でもさ、世界にはリベンジって言葉もあるんだから、次を頑張ればいい。赤司に勝ってやればいい
結局はそれだけ簡単で単純な事なんだよ」
「うっし!真ちゃん、先輩達とはもうできねぇけど、俺たちはまだ次の夏があるんだ。帰ったら練習しよーぜ!」
「立ち直るの早いね、さすがハイスペック。そろそろ僕は行くよ
あ、またダブルデートしようよ。今度はどこにしようかな、あ、水族館とか動物園。コンサートでもいいな…次は僕が計画を立てるから楽しみにしててよ」
「「!!」」
「…ふん。俺の運勢が良い時に頼むのだよ」
「おー、楽しみにしてんぜ!!黄瀬にも頑張れって言っておいてくれよー」
「うん、わかった。またね」
そう告げて雲雀は来た道を戻っていき緑間と高尾はその背中を見送ってから自身のチームの元へと向かっていく