すべてが終わってしまう前に
□三倍返しする質だから
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「……っ、つ……」
「よぉ、久しぶりだな、キョーヤぁ」
「!は、いざき……!!」
頭の痛みに顔を歪めながらも自分を見下ろすように立つ目の前に現れた知り合いの顔に雲雀は目を見開きキッと睨みつけた
……
雲雀が二年生になりミニゲームをしていた春の大会の数日前…
ガンッ!と鈍い音と共に雲雀が床に倒れ灰崎が嘲笑うように見下ろしていた
「あ、悪い。肘が当たっちまった」
「「「雲雀!!」」」
「…っ……」
「おい、何をしてんだよ、灰崎!」
「今のはワザとだよねー…?」
「事故だよ。振り返った時に肘が当たることくらいあり得るだろ?」
「緑間、雲雀を看てやれ」
「わかったのだよ。雲雀、頭を見せろ」
「…これくらい平気。それに、事故だってあり得る…から、」
頭から流れる血を拭いふらりと立ち上がり数歩歩いたが体がフラついてコート上に倒れた雲雀に数人駆けよった
すぐに保健室に運ばれた後、病院に行くように勧められ診断を受けた結果、中度以上の脳震盪と判断され二週間の絶対安静を必要とされ春の大会に出ることが叶わなかった
……
そんな過去が雲雀の脳を過ぎり、ギュッと唇を噛み締める
「雲雀…?なんでこんなところに……」
「火神?君こそ何で…いや、それより……
灰崎、何をしに来た。また僕を潰しに来たのか?」
「ちげぇよ。目的はお前じゃねぇ、お前らだ」
「そんなに黄瀬に奪われたのがショックかい?相変わらず器が小さいね」
「その減らず口、切り取ってやろうか?」
「ハッ、小さい男は嫌いだよ。それならキセキのみんなの方が何万倍もいいから」
「(イラッ)てめぇ……」
「……君とは馬が合わない、そう告げたよ
僕が認めた以外で逆らう奴は全て咬み殺す。あの時の屈辱、忘れてないから
ガキが粋がるんじゃねーよ、灰崎」
「てめ……!…!」
バチィ!!
「オイオイ、いきなりオレにボールなげつけるなんて、いーい度胸だな、リョータあ」
ボールを投げつけた黄瀬が雲雀に気づくと苛立ちを露わにする
「黄瀬!?」
「どーもっス」
「お前…まさかあいつと知り合いなのか!?雲雀も知り合いらしいし…」
「まぁ…そっスね。名前は灰崎祥吾
帝光でオレが入部する前までスタメンだった奴っス。そして…恭に怪我させた挙句、赤司に強制退部させられた選手っスよ」
「!!」
「実力はあったけど、見ての通り暴力沙汰が断えず、オレとほぼ入れ替わりで姿を消した
…はずなんスけど、どーゆー風の吹きまわしっスか?」
「別に復讐的なそれらしい理由なんてねーよ。ただのヒマつぶしだ
バスケなんてどーでもいいが、なんかオレが辞めてから【キセキの世代】やら【キセキの心臓】とかやたらさわがれるようになったからよォ
お前ら5人と雲雀のうち一人から、もう一度その座を奪っちまおうと思ってなァ
ふと思い出してとり返しに来ただけだ。実際オレはスタメンだったわけだし、倒せば誰も文句は言わねーだろ
それに次の相手がお前なら、なおさらだぜリョータぁ。なんせお前はオレに一度も勝てないままうやむやに5人目と呼ばれるようになったんだからなァ?」
「!?(黄瀬が負けてる!?)」
「…火神っち、一つ確認しときたいんスけど…
そのキンパツ美女は誰スか?」
「空気ぶち壊しだよ、バカ黄瀬」
場違いな黄瀬の問いにヒュンッと雲雀の手からトンファーが飛び黄瀬の後頭部へとぶつけられた
「今それどころじゃねーだろ!オレとタツヤの師匠だよ!バスケの」
「え!?マジ!?
ってか、雲雀っち何でそんな物騒なもん持ってるんスか!!」
「母さんから護身用にって言われて中学から持ってるけど?」
「地味に痛いっス……
本当に悪いんスけど…この場はここで収めてくれないっスか」
「!」
「状況はなんとなくわかるっスけど、次の試合…どうしてもアイツとやらしてほしいんス。雲雀っちこともなんスけど…灰崎はオレが責任もって倒すんで」
「僕も借りはファンに限らず絶対に三倍返しにする質だから。僕の試合を奪ったんだから、覚えておくんだね」
言い切る黄瀬に雲雀は少し表情を緩めると灰崎に対して挑発的に笑って指差したあと宣言した
「【キセキの世代】なんて名にこだわりはない、昔火神っちにそう言ったっスけど、それでもあんたみてーのにホイホイやるほど、安く売ってねーよ、ショウゴ君」
「買わねーよ。言ったろ、リョータぁ
欲しくなったからよこせっつってるだけだ、バァカ
楽しかったぜ、雲雀が苦しむ顔を見るのは。とんだ邪魔が入って少ししか楽しめなかったけどなぁ
今度は二度とバスケできないように、足を使い物にならねぇようにしてやるよ。てめぇこそ、覚悟しとけ」
去って行く灰崎を見ながら雲雀が会場に向かう黄瀬へと近寄った
「絶対に勝ちなよ」
「もちろんっスよ」
「黄瀬ぇ!!」
「負けんじゃねーぞ!絶対!!」
「トーゼンっス!!」
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